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突発雑記帳
花火大会

 さっきから、 目の前のチャラい奴ににらまれてる。


 今日は地元からちょっと離れたとこにある港で、大きい花火大会がある。かわいい彼女が浴衣を着ると言い、浴衣を着ろとも言った。そこで着慣れない浴衣で電車に乗っているのだが。
 目の前の、めちゃくちゃ金髪で目つき悪い、けどかなりのイケメンにすっげぇ睨まれてる。 怖い怖い怖い。
 しかも居心地が最悪に悪い。なんとなく座り直すと、イケメンが唇をかみしめた。

 ええ!?オレあの人になにした!?もうなんかやだ!!

 オレだって外見だけならイカツイ顔だが、その心はかなり弱い。ビクビクしながら様子をうかがっていると、一層苦しい顔をしたイケメンが、立ち上がった。そしてオレの襟首をつかんだ。

「立て」
「ひっ…!」
「立て」

 高すぎない、けれど低くはない声で命令され、思わず喉に空気が走る。しかし二度目の命令には素直に立ち上がった。

 それからはただ、なすがままだった。

 たまにここを持てだとか、もっとしっかり立てだとか言われ、その通りにしていただけで、それ以外は何もわからない。帯をほどかれた時は焦ったが、にらまれたら文句は言えなかった。

「よし」

 ようやく許されたのは、ようやくってほど時間もたたない、まああっと言う間のあとだった。最後の仕上げというか、最後に襟をピっと整えられた。

「えっと……」

 何ですか、と今更な質問をしようとしたら、また見つめられた。

「浴衣を着るならちゃんと着ろ。座るときは足を広げすぎるな。着崩すのはかっこいいのとは同義じゃない」
「は…?」
「それに、しっかり立て。みっともないから」

 チャラい風イケメンはそう言うと、ちょうど到着した駅で降りていった。窓からその後ろ姿を見つめると、背筋がぴしっとのびていた。
 立ったままなのもどうかと思い、足を広げすぎないように気をつけながら、シートに腰掛けた。

「なんだあれ」

 チャラいくせに、妙にしっかりな、そのギャップ。それに、電車を降りる時の彼の耳は赤く染まっていたし。

「また、会えるかな」

 会えたら、仲良くなりたい。



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「花火大会」 -END-
(ヘタレ×ツンデレ)




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あきゅろす。
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