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突発雑記帳
よくいうコレはギャップ萌え

 素早く教室を立ち去った担任にかわって教壇に立って、クラスのやつらが提出する世界史のノートを集める。
 メガネで黒髪でYシャツを第一ボタンまで締めるのがすきなだけで、中学生の頃からオレは委員長キャラにされてる。まあでもニコニコ笑っといてやりさえすれば万事うまくいくし、教師からの反応もいいんだからやめられない。

「吾妻くん、ハイ」
「ありがと」
「ううん!委員長、お疲れ様」

 ニコッと笑う女に笑い返して、内心で舌打ちをする。疲れるようなことさせてる自覚があるなら手伝えクソ女。
 イラっとしながら次のノートを受け取ろうと顔をみると、そこにはリーゼントの彼がいた。

「ん」
「うん、預かるね」
「……おう」

 一言かけると一瞬目を見開いて、彼は小さく微笑んだ。その恐いという次元を遙かに離れた表情に驚いたのはこっちだ。
 もちろん対面してたのはオレだけだから今の表情は独り占めだし。まあ幻か否かも確かめられないけど。

「吾妻っ、お願いします!!あと30分時間をくださいっ」

 それからしばらくしてだいたいのノートが出揃ったかと思ったのに。クラスの中で一番アホなやつが何故か土下座をしてきた。
 ほかのクラスメートはノートを出してさっさと帰宅するか部活に出て行って、なんで残ってんだコイツと思っていたのだが。

「いま!いま写すから!!あと30分だけ時間を下さいぃぃぃ!!」
「困るなぁ。悪いんだけど、あとで自分でもっていってくれな」
「それじゃダメなんだって!!ノート借りて写したのバレちゃうからさぁッ」

 やっべぇ今素で舌打ちしかけた。なにオレの話遮ってバカみたいに喚いてんのコイツまじ殺したい。
 だけどそんなのはオレのキャラじゃないわけで……

「……今回だけだよ?じゃあちょっと席を外すから、早くやり終えてね」
「神様ジーザスエンジェル!!」

 叫ぶバカ(アホから格下げ)に苦笑(精一杯の笑顔)を向けて、オレは苛立ちを隠すために一度トイレへと向かった。

 のが確か15分ほど前だったはず。トイレから出て、あのバカと一緒に過ごすのが嫌だったからぐるっと校舎をめぐって、意を決して教室に入ったらもぬけのから。
 しかし黒板には『早く終わったから帰りまーす』とある。

「……あのクソ野郎」

 無人なのをいいことに漏れた独り言は、誰の耳にも届かず消えた。
(重い重い重い重い重い重い重い重い)

 教室からクラスメート全員分のノートを抱えて、かつ自分のカバンも背負って史学準備室を目指すが、あまりの重さにイライラはもはやピークだった。
 しかもノート40冊だ。無駄にかさがあって、前は見にくいし。

(あーくそまじでめんどくせぇ!!)

 と、悪態をついたその瞬間。
 廊下の角を曲がるのに一瞬失敗をして肩をぶつけてしまった。その拍子にノートがぐらっとして、バサッと散らばった。

(・・・ハァ)

 もう帰りたい。ちょっと涙目になりつつノートをひろい集めようとかがんだ。
 ひょいひょいと一つの山を作っていくノート。中にはばらまかれた衝撃で開いてしまったものもあって、クラスで人気の松永の字が意外に汚くて引いた。
 と思えば、お、と目を惹くほど綺麗に整ったノートを見つけて、パラパラとページをめくってしまった。
 ぴっちり定規をあてて引かれた線や、授業中の先生が何気にこぼした歴史エピソード、地図はわざわざ縮小コピーされて貼られていたり。

(なにこのA型っぽいノート。誰の?)

 ワクワクしながら表紙の名前を見ると――


「うわっ、っくりした……。あ?委員長?なに座ってんだこんなトコで」
「! 、ああ。ノートの運搬中だったんだけど、まいちゃって」
「そりゃ災難だな。……半分持つ」


 見上げたらリーゼント。

 え、なにこの字の綺麗さとノートの素敵さ。こんなリーゼントであの几帳面さってなに?
 てゆかさりげなく手伝ってくれてんだけど。優しいんだけど。不良なんじゃないの?

「おい、何ぼーっとして……ってオイ!!お前そのノートオレんだろ!!」
「え、うん」
「うんじゃねぇよ!!何見てんだよ!!」
「いや、素晴らしいノートにびっくりしてた」
「!?!?」

 一気に顔を赤くするのとか、え、なんかかわいいんだけど。

「……あ、ありがとな」
「え?」
「ノート!!……誉めてくれて、う、嬉しかった、し」

 いや、うん。
 このリーゼントかわいい。



「よくいうコレはギャップ萌え」-END-

「クラスのあの子」続編。
優等生ぶりっこ×A型気質の不良
なんか,,,なんかかわいくないですか?←

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あきゅろす。
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