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突発雑記帳
春めいて脳内


 桜散った後の校庭を教室の窓から眺めた。それは特に意味のない、ただの暇つぶしだったのだけれど。

 教室中の椅子が動く音がして、オレものんびりと席を立って、また座った。


「ふーじっ、帰ろうぜ?」
「おう」

 リュックを背負ってにかっと笑う、三木に促されてオレも鞄に荷物を詰めた。

「そーいや、見た?」
「なにを?」
「ほら、あの、不良の」

 唐突に話はじめてニヤリと笑った三木は隣の席を勝手に拝借して、頬杖をついた。

「不良?」
「始業式に絡んできた3年生を全員ぶっ飛ばして停学中だった悪魔だよ!」
「悪魔?」

 何がなんだか全くわからない。一方三木は興奮気味にバタバタ手をうごかして騒いでいる。

「フジ、何で知らねぇの?超有名だし!!」
「ほら、オレ平凡だから。そういう噂とか疎いし」
「いやいや平凡だからこそ危険人物は把握しとけ。カモにされんぞ」

 はい、の意志をこめてコクリと頷くと三木はまたにやりと笑った。かなり楽しそうだ。悪魔さんはそんな愉快な人なのか。

「悪魔は背がデカくて、髪が赤くて、目が蒼いの」
「デカくて赤くて蒼い……」
「で、喧嘩は最強、素行は最悪、しかし天才、そしてイケメン」
「へぇ」

 そんな奴いるんだ。それがオレが悪魔に対して初めて抱いた感情だった。

「目つき悪いからかなり迫力あるけど、いや、あれはかなりカッコイイぜ」
「……あれ、って悪魔?」
「悪魔だ!!」

 ふっと何気なしに窓の外を眺めた、葉桜の校庭に立つ朱い髪色。それを囲む、他校生と思しき学ランの集団。それはまさに喧嘩の瞬間だった。

 赤毛はひとりだった。仲間もなく、ひとりで、集団を殴って蹴って叩きつぶしていた。


「すっげ……悪魔っつーか鬼だな」
「こえぇ……」

 思わず三木とささやき合う。動くたびに舞う長めの赤毛を見ながら。

「そういえばあの髪、地毛って噂だぜ」
「地毛?あれが?」
「目もカラコンだとか、自前だとか、気に入った色の目を抉って来たとか、噂だぜ」
「えぐるって、ないだろ」

 ため息をつきながら、窓の外の喧騒から目は離せない。それはオレが初めて悪魔を認識した瞬間だった。

 朱い髪、蒼い瞳の、悪魔を


前サイトから転記/不良×平凡の王道っぽいのが(ry 朱より愛し:第一話

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