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突発雑記帳
オージサマのセカイ


「あああもううっぜぇぇぇ!!」
 と、苛立ちに身を任せて放りなげた携帯さんが、

ガシャンピシャッ

 という不思議な音をたててベッドに落下した。


「……げ」

 恐る恐る携帯をつまみあげると、画面が上下反転していた。

「くっそ… 修理代、いくらかかるんだコレ」

 もうふんだりけったりの心境で、ショボンとため息をついた。
こういう時は気分転換にゲームでもやろう。
そう思って自室を出てリビングに向かおうとした。


 ………うん?


ガチャリとドアノブを回した先は、異世界でした★













 そんなこんなのアレコレがいろいろあって、オレは今非常にピンチか、といえばそうでない。
というかピンチはもっと早くにやってきて、オレは今わりと安定した生活を送っている。

「おはよう姫。ああ、今日もそなたの瞳は美しい。さあ我に口づけを、愛しいアンリ」
「……オハヨウ」


 今オレはこっちの世界の王子様の家に住んでる。というのは、オレの前に跪く、金髪蒼眼の超絶美男子に拾われたからだ。
 なにやら真っ黒の髪だとか真っ黒な瞳だとかが黒曜の輝きだとかなんとかで、とにかくプレミアらしい。
 この金髪美男子、シュナイコフ・エザン・フィナンシェという長ったらしい名前で、勝手にフィンと呼んでるんだが。まあフィンは、オレに、なんだ、一目惚れしたとかで。

「照れずともよい。さあ」
「いや、ってゆうか、オレ男だから姫じゃないし」
「それは言葉のあやだ、アンリ? そんなことに腹をたてて、かわいいやつだ。仕方ない」

 ギシリとベッドがきしんで、フィンがまだ寝ていたオレに覆い被さる。長い金髪がさらりと落ちて、オレの頬をなでた。

「おはよう、我が君」

 チュ、と小さな音をたてて唇が離れる。ここにきて、毎日がキスから始まるのに。いつまでたっても慣れずに顔が赤くなる。

「さあ、もう72時になる。起きなさい」
「うん」
「100時ちょうどに、兄上がいらっしゃる。礼儀よくするのだぞ」
「わかった」

 のろのろと起きて、何気なく携帯を見やる。
 あの時壊れたままの携帯は上下逆さのまま、もう動かないけど。デジタル時計の待ち受けは、91:91―――



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オージサマのセカイ
(美形×平凡/異世界)

♪song by
 スガシカオ:91時91分





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あきゅろす。
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