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オレの祓い魔
親子なんてね
(スクール時代、マスダ視点)



「え、なにそれ? コバさんじゃなくて?」
「そう。マスダ」
「呆れてものも言えないよ。そんなわけないだろ」
「だよなぁ」
「誰が言ってたの、それ」
「さぁ? でもすげー噂になってんぜ」
「バカばっかりだな……」

 思わず口にしてしまった黒い発言に、友人が固まった。仕方ないじゃないか、本心だ。だって本当にくだらない。
 誰と誰が親子だって? 総帥とオレなんて、どこも似たところなんてない。コバさんが実の親子に疑われるのならわかる。あからさまに贔屓されてるし。
 だのに、何故オレが槍玉に。しかも噂は蔓延しているというし。

「そんなくだらないこと言う暇あるなら、とっとと噂回収してきて」
「ハイ」

 くだらない噂に翻弄されるバカな友達の尻を蹴り飛ばしてふぅとため息をつく。と、頭上からクスクスと笑い声が響いた。
 気配なんてなにもない。けれど存在感が隠しきれていない。否、気配を断ちつつ存在感だけ滲み出したのか。

「……僕はこんな風に頭上から見下して笑う人に似ていますか」
「さぁ、私にはわかりかねるな」
「そうですか」
「それよりも、私の息子に間違われたことを微塵も光栄と思わないお前に疑問を感じているよ」
「僕には父の記憶も母の記憶もありますからね。あなたが母親ではないことは明白です」
「つまらない答えだ」

 再びクスクス笑い出したこの人は、今まさに本部の会議を仕切る立場ではなかったか。先ほどから総帥を探す式紙を何度もみているし。
 まあしかし、こうも堂々と術による探索をかわしてサボるなんて。とんだ才能の無駄遣いだ。
 こんな大物とオレが親子なわけないだろうに。本当に噂とはくだらないものだ。

「アイハラ様」
「なんだ」
「貴方は、コバさんと僕と、貴方の息子に近いのはどちらだと思いますか」
「なんだ、その問いは」
「好奇心です」
「くだらん」
「そうです。くだらない、ただの好奇心ですから」
「だから、なんだ」
「お気軽にお答えください」

 総帥はフッと鼻で笑うと、どうやら気が向いたのか、答えてくれるらしい。
 あなたは知らないでしょうが、総帥。あなたに贔屓され、知識という知識をあなたから直接叩き込まれるコバさんが羨ましくない人なんて、誰もいないんですよ。
 これはただの好奇心。あなたがどちらを選んでも笑えるような、そんな。

「アーイーハーラー!」

 なんて思っていたら、遠くからコバさんの声が響いてきた。
 きっといつまでも見つからない総帥に会議が始められず、コバさんも総帥の捜索を命じられたのだろう。唯一の弟子が自分の名を敬称もなしに叫び回るなんて、きっとこの人には耐えられないはずだ。

「あのバカとお前を比べてなんになるのか、私にはその好奇心が全く理解できんな」

 ほらみろ。何時の間におりてきたのか、今や総帥は腕組みをしてオレの横に立っている。

 アイハラ何やってんだよ! 今日は総会だろ!?というコバさんの叫び声が響くまで、あとどの位だろう。



「親子なんてね」-END-

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