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黒髪男子の心情
2

  二人でいるのを見て、放っとくわけにはいかねー。ってね、なんか最近オレのが愛がでかい気がして萎える。

「たいちー、まーさん」
「あ?山下か」

  ほら!こーゆーのな!
  つーかふつー彼氏に声かけられて、あ?とかっつーリアクションするか?まじで。

「つーか太一って呼ぶな、なんか痒い」
「たしかに。タツって太一のことダーヤマって呼んでるイメージなんだけど」
「今日は太一って呼びたい気分なんですー」
「ハイハイ」

  山田のこと太一って呼ぶまーさんにも、オレのコト呆れた目で見てくる山田にも腹立つ。イラつく。

「二人でなにしてんの?」
「移動ですけど」
「どこいくの?」
「え、ふつーに次の講義」
「……へぇ」

  なんか相手にされてない気がして、すげー心に余裕なくなってきた。思ってもみないような低い声で、へぇ、とか言っちゃったら、なんかまーさんが笑いだした。

「なによ、まーさん?」
「タツって太一のことすげーすきだよね。喫煙所とかでも即声かけてるし」
「え、そう?」
「タツと太一仲良くてちょっとムカつくもん。オレのが太一との友達歴長いのにさぁ」
「なんだそれ。まーさん恥じぃことゆーなよ。山下とも別にふつーの仲だっつーの」

  そう言って笑ってまーさんの背中叩く山田に、爽やかに笑うまーさん。まあ確かにオレのが知り合ったの後だけどさ。だから?オレのが山田との距離はちけーんだよ、ばーか。

「太一、今日バイトないよな?」
「おー」
「まじで!じゃあ久しぶりにカラオケいこーよ、太一」
「カラオケー?」
「いーじゃん。なんか歌いたい気分なんだよね」
「あー……」

  がしっと山田の肩に腕回したまーさんは、山田を覗き込むよーに誘ってて。山田はバレバレなのにちらっとオレに視線を寄越した。
  オレが山田を家に呼ぼうとしてたことなんかモロバレなんだろーな。んで、断ってオレの機嫌が損なわれないか伺ってきてやがる。

「太一、タツのこと気にしすぎ! まじでオレ淋しいんだけど」
「んなことねーって」
「あんの。っつーことで太一は今日、オレサービスデーね」
「なにそれ」
「オレのコトおもてなししなさーい」

  ってゆーふざけたことをまーさんが抜かした時だった。

「痛っ!」
「よう」
「よう、じゃねーよ!いきなり殴るとか!ミーくんのバカ!」
「ミーくんってゆーな」

  ちらっとオレ見て眉をあげた南が、ちゃっかり山田とまーさんの間に割り込んでくれたのは。……いつから見てたんだろ。


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