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黒髪男子の心情


 ぼーっとしてたら、ドアから音が聞こえてきた。ああそういえば、部屋に入って鍵かけてない気がする。案の定、ドアの人物は鍵をかけてしまったらしく、あれ!?とか慌てた声が聞こえてきた。
 それから恐る恐るな雰囲気でドアが開くと、人が入ってきた。……どうやら一人みたいだ。よかった、女連れとかじゃなくて。

 なんて、妙にほっとしてたら、山下がガタッと体勢を崩したらしい。

「ッ!? っくりした。は?……山田?」
「よう」
「なんだよいきなり。っつうか暗いって。電気点けるぞ――ッ」

 言ってスイッチに触れて部屋に電気を点けると、山下は絶句した。まあそうだろうと思う。かなり荒らしたからなぁ。
 探せば探すだけ女の痕跡が出てくる部屋なんだ。荒らさないわけにはいかないだろ。

「は?なにしてんの。これ、お前がやったの?」
「だったら?」
「……だったら?だったら、ってなんだよ」
「むしろなんでオレがキレらんなきゃならねーのかがわかんねぇよ」

 一気に嫌な顔をした山下を、オレは最大の侮蔑を込めて睨みつけた。ふざけるな。バカにするな。

「身に覚えは?」
「は?」
「オレに部屋を荒らされなきゃなんねーような、身に覚えはねぇの?」
「ねぇよ」
「ねぇのかよ」

 ハッと思わず鼻で笑ってしまった。それが気にくわなかったのか、山下はチッと舌打ちをしてカバンをベッドに投げつけた。

「ねー、山下さん」
「なんだよ!?」
「オレさー、今日は山下と話がしたかったんだ」
「で?」
「でも、来て考えが変わった。まあ話はしたいんだけど。お前の話なんか聞く気なくて」
「お前はなにが言いたいわけ?」
「別れよう」
「―――は?」

 言った瞬間、苛立ちの表示が無に変わった。呆然、とも言えるかな。

「ああ、もしかしてもうだいぶ前から別れたつもりになってた?なら悪い。でも直接言われてなかったから、まだ付き合ってんのかと思って」
「いや、待てよ。お前何言ってんの?山田、」

 山下はそう言いながらオレに手を伸ばしてきたけど、オレはそれを払いのけた。

「触んな」
「ッ、山田!!」
「触るな。女に触った手で、オレに触るな!!」

 思わず叫んでしまった。でも、もう止まらない。止められない。

「なんだよこの部屋!? なんでこのベッドに女が寝てんだよ。なんでお前はオレと会うって約束した日に女と手ぇつないで歩いてんだよ!?」
「それはっ」
「それは?ってことは、それはオレの気のせいじゃなくて事実だよな?」
「おい山田、聞けよ」
「聞きたくねぇよ!! っつうか、もうどーでもいい。それが事実ならなおさら、オレはそんなヤツとは付き合えねぇ。お前はオンナと付き合えよ。オレらもともとノンケじゃん。元に戻ろうぜ」

 言い切って山下を見ると、山下は曇った瞳でオレを見ていた。その瞳を見ながら、オレは立ち上がった。

「返す」
「……オレの話聞いてくんね?」
「もう、関係ないっしょ」

 山下の手を無理やりとって部屋の鍵を返した。そうして苦笑した瞬間、オレの体は山下の腕の中に閉じ込められていた。

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あきゅろす。
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