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黒髪男子の心情


「……、つまり?」
「オレ、そろそろフられる? それともオレはなんにも知らない残念なヤツとしてこのまま放っとかれんの?」

 最近、山下はオレを放置するようになった。
 家に行くと露骨に嫌な顔をする。遊びに誘うと常に予定がある。取り付けた約束の待ち合わせには現れない。

 で、昨日は持久戦覚悟で待ち合わせ場所に居続けたら、山下を見つけた。女の手を引いて笑いながら、オレにウソの電話をする山下を、見つけた。

「タツに、なんか聞いたのかよ?」
「なんか?……なにを?」

 フッと鼻で笑うとミーくんが眉をしかめた。

「会ってももらえねーんですけど、オレ」

 しかもその理由が女。
 あーもう、笑えねー。

「山田、泣くなよ」
「泣きたくて泣いてるわけじゃねーよ」
「……タツと、話せ」
「なに話せばいいんだよ」
「言いたいことぶちまけてやれよ」
「会ってもらえないかも」
「なんのためにお前は合い鍵持ってんだ。部屋で待ち伏せろ」
「……マジかよ」

 ミーくんの腕が伸びてきて、オレの頭を撫でた。その腕が背中に回って抱き寄せられて、胸に額をつけて泣くオレは、傍目からきっと最悪だ。

 早く離れなきゃ。

 こんな誰でも来れる場所で、誰に見られるかわからない。ミーくんに迷惑はかけたくない。

 冷静にそう判断するのに体が言うことを聞かない。泣きすぎて頭がボーッとした頃にミーくんから漸く体を離したオレは、その足で山下の家に向かった。

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