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ああ、かみさま








時々。本当に時々だけど、どうしようもない程の寂しさを感じるときがある。
それは泣いているときではなく、気持ちが明るいというか、楽しいときにだけ感じてしまうもので、ただ私は訳も分からず泣くんだ。いつもいつも。


「……ふっ…う…」

ほら、今日もきた。それはまるで泣き虫の登場のようだった。

ひときしり涙を流した後は泣き疲れていつの間にか眠る。そして、いつものように夢を見るの。悲しいけどどこか懐かしい夢を。









青い青い空がどこまでも続いて、足下には青々としてまっすぐに太陽へと向かう若草。私はいつもこの若草の中心でただ立っている。むせ返るような草独特の臭いが妙に懐かしく感じて、無意識にまた涙が溢れた。


寂しい、さみしい。何故か分からない。
哀しい、かなしい。泣きたくなるほど。


こころが言葉を叫ぶ。


逢いたい、あいたい。もう一度、一度だけでいい。
あえない、もう二度。あの人はとうの昔に空へ旅立ったのだ。


渦巻く感情の波に耐え切れず、風景から顔を隠すように膝を抱えた。ひとつの風が通り過ぎていき、私の頬を掠める。
――ああ、あの人が来てくれたんだ。
あの人の呼び声が聞こえる。柔らかな声で私の名を紡いでいる。それだけで、私は出口のない闇から抜け出すことができる。









そう思ったところでいつも目が覚める。夢から解放された後に残る虚無感は、私をさらに不安にさせた。


「…沖田、先生」


かつて激動の時代を生きた私は、幸か不幸か、来世では戦のない時代に生まれ落ちた。あの頃の面影はもう殆ど残っていないが、それでもあの頃を生きた記憶は流れ行く時代に消されることなくまだ私の中に残っている。
…神谷清三郎、富永セイ。どちらも本当の私で、"私"は確かに生きていた。そして今も生きている。
たったひとつの願いは叶うこともなく。








(何故私は“いま”生きているのでしょう)
(何故あなたは“私”を眠らせてくれなかったのでしょう)
(こんな感情を思い出すくらいなら、)

このままずっと眠っていたかったのに



▼image by:天野月子「龍」
 転生ネタ。

09/09/15



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