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始まりの鐘の音


 

それは突然だった、と思う。

付き合っていた彼氏と別れた時、同級生で仲が良かった男の子に告白された。
突然のことで驚いたが、少し待ってほしいと告げた。彼は分かったと頷き、それ以来、元カレにフラれて傷心だった私の傍にいてくれるようになった。


「今日はまた一段と笑える面ですね」

「ふふ、ぶっ倒してやろうかウォーカー」


こんな会話が私たちの日常となっていた。元々、腹の中が真っ黒な彼の言動は時々グサリと胸に突き刺さる。こいつ本当に私のことが好きなんだろうかと考える時もあるくらいだ。
まあ、私一人だけにこんな扱いじゃないし、そう考えると思ったよりマシか、うん。私は同じクラスの長髪と赤毛に向けて合掌した。







ある講習会に彼と一緒に参加した時、それは起きた。
元カレの隣には女の子。その女の子は自分の友達で。複雑そうな表情の元カレに近づき、泣きそうになりながらも何とか堪えて、二人に「ばいばい」と笑って言った。

本当に終わってしまったんだ、私の恋。



建物を出ると一緒にいたアレンが私の手を引いて物陰に連れて行く。


「どうしたの?」

「…いい加減、僕の事を見て下さい」


驚いて顔を上げると切なそうに顔を歪める彼。何だか胸の奥が苦しい。ああ、そうか。私はこの人を…。
彼の頬にそっと手を寄せて「…ごめん」と言って頬にキス。
彼は嬉しそうに笑い、私を抱きしめる。私も笑いながら「大好きだよ」と彼の胸に顔を埋めた。
彼は私の顎を上に持ちあげ、そっと触れるだけのキスをする。


この人なら私を幸せにしてくれる。
この人なら本気で愛せるかもしれない。いや、もう愛してしまってるんだ。


唇が離れ、抱きしめられていた腕の力が緩くなる。私は慌てて彼の顔を見た。


「や、だ」

「離してほしくないんですか?」

「うん」


こくんと頷く。恥ずかしくて顔が見れない。心臓の音がやばい。
彼はとびっきりの笑顔で思っきり私を抱きしめてくれた。普段の真っ黒い大魔王さまとは大違いだ。


「…顔、あげて下さい」


耳元で囁かれた彼の言葉に顔をあげると、食いつくようなキス。さっきより長くてだんだん息が苦しくなる。どん、と彼の胸板を叩くと唇が離れる。間に銀の糸。しかし直ぐにまた唇を塞がれ、今度は口内に舌が入る。
深く深く。彼以外の何も考えられなくなる程に。


「僕はずっと傍にいますから」


ふと、涙が溢れそうになった。
彼はこんなにも私を愛してくれてたんだ。

ありがとう。そして、ごめんなさい。
ずっと私の事を想っていてくれたのに全然気付かなくて。でも、愛してくれていると分かってすごく嬉しかった。



「私も愛してる」




始まりの鐘の音




(今更別れ話とかしないでね)
(大丈夫ですよ、有り得ません)
((どうしようもないくらい愛してる!))


▼Title:千歳の誓い
アレンで現代。

09/08/27



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