神を殺せ。世界を奪え。
かみさま、おねがいです。
空は真っ暗な雲に覆われ、地上にはおびただしい量の血。そして、暗い暗いこの世界でただ一人血溜まりの中で座り込む私。その中心で、ああ、これがこの世の終焉なんだとぼんやり思っていた。
「…救ってみせるって言ったじゃない」
ねえ、と腕の中で眠る愛しい人に語りかけるが、返事なんてしてくれる訳がないなんてこと分かってた。
…知ってた、知ってたよ。だってさっきまで温かかった彼の身体が嘘のように冷たいし、もう動いてもくれないの。瞼だって閉じられたまま。
なのに話しかけてしまう私はどうにかしてると少し自分を嘲笑った。
「どうするの、このままじゃ世界が滅んじゃうよ」
ゆるゆると私たちの周りを見渡してみると視界一面に真っ赤な色が映る。ち、チ、血―…大切な人たちの血。ああ、人間ってこんなにも無力だったんだ。
冷めてしまったココロとは裏腹に頬に涙が伝い、我を忘れたかのように必死に仲間の名前を呼び、手を伸ばした。
「おいて、いかないで…」
きっとこれは夢。悲しい哀しい夢なんだ。きっと、目が覚めたら彼が隣にいるんだ。笑って私を抱きしめてくれるはずなの。
食堂に行ったらね、リナリーが私たちに「おはよう」って笑って。そうしていたら、突然ラビが私に抱き着いてきて、それを見たアレンがラビをボコボコにしちゃうの。それが毎日あるから、もうアレンの目も本気なのよ。笑えるでしょ?だって、あの神田までも笑ってるのよ!…だからね、今日も、きっと。
ねえ、そうでしょう?さっき約束したじゃない、「みんなでホームに帰るんだ」って。
「――…あ、あれん」
お願いです、かみさま。
早く、早くこの夢から解放して下さい。
どうしてこんな夢を見せるの?私はこんな未来なんて望んでいなかったのに。
例え本当にこの世の終焉が来てしまったとしても、私はただ、みんながいてくれれば戦えるんです。頑張れたハズなんだ。
なのに、あなたはどうしてこうも私から愛しい人さえも奪ってしまうのですか。
ぎゅっと冷たくなったアレンの身体を抱きしめた。
「私たちは世界のために戦っていたというのに…!」
暗い暗い空に向かって叫んだ。でも、叫んでも叫んでも、それに神が応えることは終ぞなかった。
神を殺せ。世界を奪え。
(そして私はセカイで一人ぼっちになった)
▼「憂鬱アリスの詩篇」さまに提出。
09/07/20
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