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君が心から笑えるように



「神様はいじわるだね」


何の前触れもなく静かに彼女は呟いた。いや、何もなかったというのは間違いで、その証拠に俺たちの目の前には廃れた町が一つある。



かつん、ブーツの音が石畳の道に響く。その場に立ち尽くす彼女に、生存者を探そう、と促し、町の奥にへと一歩踏み出した。
ざああ、と降り続ける雨が俺たちを濡らして、それが何故か恨めしい。


「ねえ、ラビ」

「んー?」

「ごめんね」

「…お前が謝る必要なんてないさ」


ぽんぽんと頭を軽く叩いてそう言えば、彼女は哀しそうに微笑んだ。かなり無理矢理な笑みだったが、それでも少しだけ笑ってくれたから安心した。


「ありがとう、ラビ」


でもな、俺はお前にそんな顔をして欲しかったんじゃないんだ。こんな事を言うなんて不謹慎だけど。


君はいつも笑ってばかりいるから、たまには思いっきり泣いて欲しかった。
無理なんてしないでいいから、遠慮なども要らない。ただ、君が心の中に溜めて我慢してきたものを吐き出して欲しかったんだ。



あれ、なんか目の奥が熱いや。何だろう、胸が悲鳴を上げているような感覚。


「ラビ、我慢しなくていいんだよ」


何でお前がそれを言うんさ。我慢しているのはお前の方だろ?
でも、その言葉は声にならずに身体の奥底に落ちて行く。


「我慢なんかしてないさ」

「…嘘、今にも泣きそうな顔してる」


彼女は馬鹿だ。それだけ他人の心配しておいて、自分が今どういう顔しているか知らないんだろう。自分より他人。結局コイツは自分よりも仲間が大事なんだ。


「…お前の方が、」

「ん?」

「俺よりお前の方が泣きそうな顔してる」



彼女は俺よりも馬鹿だ。
自分の感情に蓋をして、仲間の為と生きようとする姿はとてもとても脆くて儚い。ほら、今にても泣きそうな表情しているのに、瞳から涙が零れようとも笑っているその姿がとてつもなく痛々しい。

もう我慢しなくていいんだ。泣いてもいいから、本当の君を俺に見せてくれ。そう言えば、彼女は泣いてくれるのだろうか。




Can sincerely laugh by you.
(どうか、君が心から笑えるように)




たくさん泣いた後には、きっと前よりも強くなれるはずなんだ。
だから少しだけ、心の蓋を外してみようか。


09/10/04



あきゅろす。
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