愛の言葉なんて
どうして人は愛がなければ生きていけないんだろう。
よくドラマとかで見かける恋人達のあの台詞、「あなたがいないと私は死んだも同然」。私はこの手の台詞を聞くとつい言ってしまう言葉がある。
なんでやねん、んな訳あるかい、と。
お前たちは恋人がいないと生きていけないのか。そりゃ、ツッコミたくなるよ。もしそうなったら、世界中にはどれだけ不幸な人達がいるんだって話。別にさ、ジャングルに一人置いてきぼりにされた訳じゃないんだし。大袈裟すぎるんだよね、みんな。
結論。正直、私にはその気持ちがわからない。
「ね、アレンはどう思う?」
バサッ
僕は持っていた本を思わず床に落とした。
意味が分からない。てか、今それを言うかこの状況で?二人っきりの部屋で?え、なに、僕らは恋人同士なんじゃないのか?
突然、彼女が意味不明なことを語り出して、僕の頭は大パニックだ。何だこいつ、頭おかしくなったのか。
…あ、バカなのはいつものことか。
「アレーン、聞いてるー?」
「はいはい、聞いてますよー」
彼女の言葉を軽くあしらって、僕は再び読みかけの本に手を伸ばした。もうっ、と隣で不満そうな声がしたけど、あえて無視。
「無視すんな、コラ」
「無視してませんスルーです」
「同じことだよ!この似非紳士め!」
「…」
「え、ちょ、冗談だって。本よりも私の話を聞いて!」
「…僕は本を読んでいたいんです、他をあたって下さい」
「いーやー!アレンからさえも相手にされないなんて私寂しくて死んじゃうよー」
はあ、とため息をついて読んでいた本を閉じた。
てゆーか、僕以外の人にも同じことを聞いていたのか。特に神田からなんて舌打ちされたんだろうなあ、とか思っていたら彼女がちょっと可哀相な気がしてきた。
まあ、耳元でしつこく話しかけてくるので静かに本も読めやしないし、仕方ない、このおバカさんに愛というものを教えてあげようとするか。
深呼吸をして彼女の目をみると、彼女はきょとんとしていた。
「ん、なに?」
「好きです」
「…は、い?」
「僕は貴女を愛してます」
「ア、アレンさん?何言って…」
「貴女が大好きなんですーッ!!」
「だああ!叫ぶなあッ」
窓ガラスが割れるんじゃないかってくらい声を張り上げたら、口を塞がれた。目だけで隣を見ると真っ赤な顔をした彼女が同じようにこちらを睨んでいた。それを見て逆に僕は満面の笑顔になる。
彼女に向かって腕を伸ばして自分よりいくらか小さいその身体を思いっきり抱きしめた。
だってさ、
愛の言葉なんて
(声にしなきゃ伝わらないでしょう?)
09/07/07
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