愛しいから/平、rkrn
私の好きな人は自意識過剰で、うぬぼれ屋で皆から少しだけ嫌われているけれど好かれているそんな人。学年一の成績、見た目も綺麗。
そんな彼が私は好きだ。彼の血や吐いた汚物も舐めて、愛でる事ができるぐらいに好き。それを友達は狂ってる、と言うけれど狂っていない。
だって、だってこんなにも愛しているんだよ?
それを狂ってるなんて言う筈がないじゃない。愛しているんだよ?だから、どんなに大切だった友達を今、簡単に殺せちゃうぐらいに。
「鈴…っ、どい、う」
「え?まだ生きてるの?」
「かはぁ…っ」
もう嫌だなぁ、そんな心底驚いたような顔しなくてもいいじゃないの。
はあぁ、と深く長いため息を吐いて屈む。苦無を握りしめたまま、口当てをずらして目を細めて笑う。
「私ね、滝夜叉丸が好きなの。愛しているの」
「っ、いぁあ゙あ゙ぁ゙」
くざり、くちゅり、と変な気持ち悪い音を立てる友達の身体が彼だったら気持ち悪くもないのになぁ、と思いながら苦無をザクリザクリと刺していく。
聞きたくもない悲鳴を聞きながら、私は笑いながら言う。
「そんな彼をたぶらかしたのは貴女じゃない。私がどれだけ彼が好きなのか知っているくせに…ねぇ?」
「鈴っ、鈴ッ…ちが、」
「私、見たんだよ?二人でこそこそと話しているのを」
かぶっ、と血を吐いてその血が私の顔に張り付いて垂れるけど知らないフリをして私はザクリザクリと苦無を刺す。
口や身体から大量の赤い液体を流しながらピクリとも動かなくなるのを見届けてから、苦無をそこら辺に捨てて立ち上がる。ふぅ、と達成感から出る息を吐いてから真っ赤な友達の足を掴んでズルズルと引っ張る。
掘っておいた深い穴に友達を転がして入れる。上から土を被せていき、埋める。
「さぁて、忍務も終わってるから帰ろうかな〜」
友達は忍務中に死んだってことにすれば、疑われないだろうし。なんて思いながら笑う。へらへらと。
はやく身体を洗って、滝夜叉丸に会いたいなぁ。この汚い血をさっさと洗い流したいわ。
「待ってて…、愛しい滝夜叉丸」
頭巾を外してから自分の身体を見てから足を止める。綺麗な身体のままじゃ疑われちゃうかな?
じゃあ、傷をつけなきゃ。
いっぱいいっぱい、
ザクリザクリと友達を刺したように自分自身の身体を刺す。痛くない、むしろこの痛みも愛しい。
「なにをしている!?」
「…滝、夜叉丸…?」
「帰りが遅い、と先生方が言っていたから気になって来てみれば…貴様は何を…っ!」
私の握っている苦無の先には大好きな、愛してやまない滝夜叉丸。
あぁ、夢のようだ。滝夜叉丸が私の血を触れている。
「鈴、一緒のヤツはどうしたのだ?……まさか、」
「、?」
「だからそんな風に自分の身体を痛め付けるな!」
「え、」
自分でつけた傷に綺麗な綺麗な滝夜叉丸の頭巾を裂いて、巻かれていく。それに驚くけれど、滝夜叉丸の手が私の血で汚れていくのを見て口が緩む。
私の汚い血が綺麗な滝夜叉丸を染めていく。
「鈴、何笑って…」
「滝夜叉丸、滝夜叉丸ッ」
愛しい滝夜叉丸。好きで愛している滝夜叉丸。綺麗な滝夜叉丸が毛皮らしい私に触っている。こんなにも簡単に触っている。
ああ、気が狂ってしまいそうだ。狂って、狂って、間違いそうだ。
「鈴、?」
「滝夜叉丸っ、あぁ、愛しい滝夜叉丸ッ」
「かは…っ」
「愛しい、愛しい、」
だから、私の手で…、腕の中で死んでよ、滝夜叉丸。
そうしたら私以外の人間に目がいかないから。私以外の人に滝夜叉丸の綺麗な姿も、見せる必要もなくなる。
愛しいから
(なにっ、行方不明だった滝夜叉丸と鈴が死体で発見されたと!?)(、はい)(なぜだ!なぜッ)(分かりません…、ですが、二人は…ッ)
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