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狂った世界の中で/兄弟、青祓



色々な臭いに鼻がもげそうになる。悪魔の血、人間の血、そう言った類いのよく解らない臭いが充満する空間に咳き込んでしまう。



「鈴さん、大丈夫ですか?」
「えぇ…、平気よ。雪男は」
「僕は大丈夫です」


心配するような顔で、私を見つめていた青い瞳が揺れたのを見つめながら深くため息をつく。
悪魔の攻撃を喰らい倒れた仲間や、私達、祓魔師によって倒された悪魔の残骸。その中で異様に明るい光を体に纏わせてるヒトを見る。
人間、と言うにはほど遠い姿の彼。尖った耳、口に収まりきらない鋭い歯、あっちこっちと動き回る黒い尻尾。
悪魔であり、人間に近い姿のそのヒトがこっちを見た。


「怪我、ねーか?」
「私は大丈夫よ。燐も怪我はない?」
「あぁ!」



ニコニコ、とこの場には不釣り合いの笑顔を見せる彼に私だけではなく、彼の弟である雪男も呆れたかのようにため息をついてしまう。



「、やっぱ、人は脆いな…」
「兄さん?」
「俺は悪魔だから、少しの怪我とか平気だけどアイツ等はちげぇんだよな…」



不釣り合いの笑顔から、悲しそうな、辛そうな笑顔を浮かべる燐。雪男はそんな燐を見て、困ったように笑っている。
雪男と燐は人間と悪魔の間に産まれた子供。普通の人間より頑丈で、下手すれば悪魔さえ従わせることができる。
そんな二人がなんで、悪魔を消す方にいる理由なんて毎回、こう仲間を失って考えさせられる。



「……燐、雪男…」
「なんだ?」
「なんですか、鈴さん」

「ずっと、ずっと、私の元にいて……死ぬまで、ずっと」



呪文のように、呪縛のようにその言葉を言えば二人は嬉しそうに笑う。さっきまで仲間が殺され、悲しんでいた顔なんて一瞬になくなって、嬉しそうに笑う。
そして、声を揃えて当たり前。と言うんだ二人は。

その嬉しそうに頷く二人を見つめながら、その奥でこっちに助けを求めて手を伸ばしている仲間を無視して私も笑う。



狂った世界の中で
(俺達にはもう鈴しかいない)(しえみさんや勝呂くん達は死んでしまった…)(だから、俺達は…)
(二人は、不死である私を求めてくれる)






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