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不気味な後輩/男主、rkrn



私は三年い組のある後輩が苦手だ。この私が苦手にする後輩がどんなヤツと聞かれれば答えは一つだ。
気味が悪い。

その一言でしか言い表せれない。それを雷蔵に言えば怒られるのが分かっているから言わない。
なんせその苦手な後輩は雷蔵の委員会の後輩なのだから。

見た目は三年い組の伊賀崎孫兵と似たように綺麗な顔立ちで、薄く笑うその姿は妖怪だ、なんて言っていたヤツもいた。次の日に大怪我して学園から去ってしまったが。



「雷蔵先輩、こんにちわ」
「鈴、こんにちわ」
「鉢屋先輩も、こんにちわ」
「あ、あぁ…」



ついでのように挨拶されたけれど、それでいい。こいつはいつもの事だから。基本、一人か同じ三年、同じ委員会の人にしか挨拶をしない。自分が嫌われている、と言うか気味が悪い、と思われているのを知っているように行動している。
だから、最初は雷蔵だけに挨拶してそのついでのように私に挨拶する。



「今日、満月だそうですよ」
「そうなの?」
「はい。でも、寒くなるって孫兵が言ってましたから…」



一度言葉を区切って、私を見る後輩の姿に肩を揺らす。
なぜ、私は後輩にビビる。気味が悪くても、苦手でも二つも下の後輩だぞ、あれは。



「夜に出かけない方がいいですよ、絶対に」
「え、絶対?」
「はい、みんながそう言ってました。今日の満月は良い満月じゃない、と」
「三年に天体に詳しい子いたかな…?天体系が詳しい人なんて……」
「先輩、」
「え?なに?」
「夜、外に出ないでくださいね、絶対に」



ゆるり、と微笑む後輩に雷蔵は疑うこともなく、分かった、と返事をした。
お風呂も早く入って厠にも行って、早く部屋に戻るよ、と後輩の頭を撫でる雷蔵。それに止めようとしたけどそれを何故かできなかった。
身体が一瞬、動かなかったから出来なくて雷蔵が撫でるのを止めるのを見つめる。



「僕、保健室に行く途中なので…、失礼します。鉢屋先輩、雷蔵先輩」
「!?」
「うん、じゃあ、またね」



私の名前を、雷蔵より先に、呼んだ。ゾワリ、と背中が震える。私の隣を後輩が通り過ぎていく、裾だけが擦れ合うだけなのに冷や汗が流れる。
完全に通り過ぎてから、その場に座り込んだ。いきなり私が座り込んだのに雷蔵は驚いていたけれど、平気としか言えなかった。



そして、朝、
生徒が二人行方不明になった、という噂を聞いて私は眩暈がした



不気味な後輩
(鈴、行方不明になった先輩がいるらしいよ、二人も)(、中在家先輩から聞いた)(ああ、そういえば、昨日の月はすごく赤かったね。そのせいでジュンコが怯えていたよ)





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あきゅろす。
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