軍事機関3 レッド先生
軍事機関T/U/(V)/W
ここはティレニア軍事機関。まだコウが軍人候補生として修行していたあの頃…。
「よっしゃ、戦士系行ってみよう!」
いつもより気合入れてます。それはもう切羽詰まった状態だからに他ありません。シスター科も魔導科も自分の性に合わないと気付いたコウは、ようやっとむさ苦しい戦士科へ行く事を決意した様だ。
戦士科にも色々あり、使用する武器によって教官も違う。斧や槍は明らかに無理なので、ここはやはり剣だろうと安易に考え……たのが間違いだったのかもしれない。
「ここか、剣の修行場は」
教室というより道場とも言える部屋の前に立ち、墨で”愛☆剣”と力強く書かれたラベルに早くも嫌な予感がしつつも、コウはドアノブに手を掛けた。すると力を入れるより先に扉が開き、否、これは浮いたと言った方がいい。ふわりとこう……枠から外れる様に扉ごと揺れ、私は咄嗟にその場から離れる。間一髪、この扉が手前にぶっ倒れる前に避けれたコウはほぅと息を吐く……が。一体何事だ?
「……ぅぅぉぉおおりゃあぁぁぁあ!」
という馬鹿丸出しの叫び声が中から聞こえてきて、目を丸くしたまま立ち竦んでいると、壊れた扉を飛び越えて部屋から男生徒が走り出てきた。
「ぎゃああぁぁぁ! 助けてぇーー!」
男子生徒は滅茶苦茶に叫びながら、廊下を走って逃げた。一体この部屋で何が起こっていたのだろうか、純粋に興味があるコウは果敢にも部屋の中を覗く。
「あの野朗腰抜けだな。全くなってない」
部屋の中は男だらけの修行場。というか垂れ幕にそう書いてある。修行”城”……って漢字間違ってるよ? でもそれもある意味合ってるか。
「おぉ? 珍しい客が来たな」
部屋の中で仰々しい大剣を携える男、赤髪のレッドは、コウを見るなり怪しげに笑った。
「客じゃありません。志願生です」
「ははっ、お前には無理無理」
「私だってやれば出来ます。剣の修行をさせてください」
強い意志を述べる少女はいつもと違って真剣だった。それはさっきも言ったように、夏休み最終日に作文書く勢いで切羽詰まっているからであって。
「俺は別にいいけど。また殴られるのかな」
「え?」
「いや何でも。じゃあコウ、まずは剣の型からだな」
「ありがとうございます! レッド先生」
先生らしい事もするじゃないかと感心するが、何の事は無い、剣の打ち合いすら真面目にやってくれなかった。私が一生懸命振った剣刃を片手で止めたり、加えて私の剣を奪ったり、更には臀部に触ってきたり……
「って何やってんですかこの変態戦士!」
「わっ、何かそれちょっといい。もらって良い? 変態戦士」
「お好きにどうぞ! 欲しいがままにすればいいわっ!」
結局無駄だったかと、コウは修行城を出て行こうとした。その途中で呼び止められ、反射的に振り返る。
「お前にとって剣技は嗜み程度でいい。本当に必要なのは……惑わされない事だ」
「――覚えておくわ」
珍しく、レッドは真剣な目を向けてきた。彼は一体何をどこまで知っているのか。それはこの先嫌でも知らされる事になるのだが……、今はまだ、教官という事にしておこう。
戦士科、△……かな。
[完]
(C)りひと 2008-1-12
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