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20話 港町リノア06


『契約精霊が契約者の武器に定着することは、よくある事です。そうなった場合、他の人間に姿を見せる事は出来ません』

「え? でもクリスさんはシルバーレイ見えてたよ? まぁ泥棒には見えてなかったけど」

『コウ、あなたが思っている程精霊は人間と親しくないのです。人と交わるのは幾億の中のほんの極一部の精霊だけです。そして、彼女にシルバーレイが見えるのには、訳があります』

 カルロの言葉にコウは頭を悩ませる。クリスさんの特別な所はなんだろうか。コウがうんうん唸っていると、フレアンがそっと声を出した。

「クリス司祭はアモン教皇のパートナーだから、何年も共に戦ってきた者同士、互いの精霊を見ることが出来るのだろう」

 パートナー

 「最強コンビ」と呼ばれていたのは聞いた事がある。

『人間と精霊は、姿は違えど本来は同じもの。自然の中で生き、心をもって行動する。精霊が自由な身であるのと反対に、人間は自由に飛んだり隠れたり出来ない。そこが違うくらいでしょうね』

 カルロの言葉に少し重みを感じた。人間も精霊も、元は一緒。人間は、精霊と違って存在を確かめれる。精霊は触れることすら出来ない。人間は自由を失くす代わりに、命の重みを知る。精霊は自由を得る代わりに、その存在の意味を失う。元は一緒。だけど、全く違うもの。

「体があるのと無いのとの差って事だね? 精霊にも人間にも心はある。心で通じ合えば、姿の有無は関係ない。クリスさんにシルバーレイが見えるのは、長い月日の中でお互いの心を通わせているから……」

 コウの言葉を聞き、上手く伝わった様だと安堵するカルロ。姿が見える見えないは、簡単に説明できることじゃない。その存在を信じているか、それが大事だ。

『ようやくお解りになったようですね。今の貴方にはそこら中にありとあらゆる精霊が見えるでしょう』

「え? あ……そういえば、ぽつぽつと精霊が姿が見える」

 不思議な感覚に身を任せながら、彼らの存在を信じようとしてる自分を感じる。今なら、アモン教皇が言っていた事も理解できる。初めて会ったとき、「君には精霊が見えるはずだ」と言われた。見えないと言い返すと、それを不可解そうにしていたが、急に「ああ、だからか」と納得してしまった。
 おそらく彼は、私が精霊の存在を信じていないと解ったのだ。いくら精霊の王であっても、関係ない。精霊の存在を信じるか否か。それが大事なことだったんだ。



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