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闇の輝星《05》


「アモン、終わったぞ──」

 遠くの方から投げ出された言葉は、アモンの父の声だった。そして父の隣には、デスもいた。
 彼らの満足げな表情から見て、次に作る武具の良い案が浮かんだのだろう。
 アモン達は親の元へ走り寄った。

 だがリセイだけは、その場に立ち尽くしたままだった。

「父さんお帰り。今度は何を作るの?」

「ああ、デス様の護身用ナイフの構想が上手い事まとまった所でな、今からさっそく取り掛かるぞ」

 父は大変意気込みながら、デスと並んで歩き始めた。今から仕事場に行くのだろう。アモンとマリアも父と共に仕事に取り掛かるため、その後を追った。

 ──が、アモンは一人残されたリセイの事が少々気になった。

「父さん、あの、リセイ…様は?」

「ん? ああ、リセイ様は午後から会議に出席されるそうだ。前に会った時よりも随分成長なされた」

 それを聞いて、隣にいたデスが「あれはまだまだですよ」と謙遜した。

「デス様、今から鉄鋼場をお借りします。一週間程かかると思いますが……必ずご期待に添えましょう」

「ああ、楽しみにしているぞ、シーモア殿。鉄でも鋼でも好きなのを自由に使ってくれて構わないからな」

 デスも上機嫌な様子で、その口調は先ほどより弾んでいた。マリアは場の雰囲気から、何か喜ばしい事があったんだと解釈し、にこにこと笑っていた。

 ――だが、アモンは、笑えなかった。喜べなかった。もちろん武具を作るのは好きだ。だが、今から作るのは覇王の為の武器……。つまり、人殺しの道具を自分の手で作る、ということなのだ。

 父は大人だし、割り切っていた。だがアモンにはまだ抵抗があった。そのことに父が気付いていないわけではなかったが、あえてアモンには何も言わなかった。
 言えなかった、のかもしれない。
 息子に正面きって、堂々と自慢できることではないのだから。

 後ろめたくはあるが、これも全て生活のため。父はそう割り切っていた。

 そんな彼らとは反対に、マリアは父の手伝いが出来る事を嬉しそうにしていた。
 彼女は彼女なりに、家族の役に立ちたいと思っていたのだろう。

 マリアはふと後ろを振り返り、花園に立つリセイを見た。銀の髪は日に照らされ、きらきらと輝く。
 おとぎばなしの王子様、とはまた違ったが、それでも今まで見てきた中で一番綺麗だと思った。

 その日から数日間、マリアとアモンは何度もクロス城に来たが、その間一度もリセイと会うことはなかった。

 ──それは何故なのか。

 その理由を知ったは、1年も先のことだった。





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あきゅろす。
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