心の絆《03》
かつて銀の楽園と呼ばれたこの銀山も醜く成り果てた。
レイは一人思う。
もうここも終わった、と。
精霊は源の力が弱まると自身も存在が危うくなる。銀鉱が汚れるにつれ多くの銀の精霊達は死んでいった。
比較的強大な力を持っていたシルバーレイも、やはり影響を強く受けている。自分の体と魂が弱まっていくのが分かった。
『例えここで終わっても、必ずまた……』
果てるなら、源と共に。
出来るなら、人間に報いを。
精霊達は皆そう祈った。
それからしばらくして、銀山下部での人通りが少なくなった。依然鉱山掘りの男達は出入りしているが、それでも初めよりはかなり落ち着いた。もう採りつくしたのかもしれない。
『人間どもめ。醜く恐ろしいのはお前達だ……!』
雑言を吐くも、その声は誰にも届かない。
精霊は儚く、人よりも脆かった。
レイは仲間達とよく遊んだ湖に来ていた。
今は一人、ただ水面に移る自身の影を虚ろに眺めていた。
億といた精霊はこの数年で百ほどにまで激減してしまった。レイと親しかったあの精霊も当の昔に力尽きて死んでいた。
『皆オレを置いていくんだな……こんなに力いらないから、オレも皆と一緒に滅びたかった』
強い力を持つために他の精霊よりも長く耐えられる彼は、まだ死ねなかった。
精霊は自害できない。
ただ自然に身を任せるしかないのだ。
知るものはいなくなった。
かすかに他の銀の精霊も散布しているのがわかるが、彼らもそう長くはないだろう。
強度を競い合っても、空を飛んで競争しても、いつも一番だった。
だから一番最後に死ぬんだ。
オレは、最後まで死ねないんだ。
レイの感情を持たない瞳から薄っすらと雫が流れ落ちた。
一滴、水面に落ちて輪を描いた。
だが、それ以上こぼれる事はなかった。
その数日後、悲劇は起こった。
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