19話 出発10
「この平原をまっすぐ行けば港町だ」
本当に足は大丈夫なんだろうかと、ちょっと心配になるものの、彼が平気そうにしているので気にしないでおこう。
「ここをって、結構距離あるよね。歩いていくの?」
「まさか……ちゃんと馬を使う」
「そっかー!」と言うと、フレアンがちょっと馬鹿にした顔をした。
「バカで悪かったわね」
「? そんな事言ってないだろ」
「言ってたもん、顔で」
「か……あのな……」
コウの気分の変わりように困惑する青年。コウは決して単純ではないけれど、純粋で真っ直ぐだ。言葉のままを受け止めるし、心のままに言葉にする。そういう屈託ない性格は好ましいが、機嫌を損ねたときは厄介だ。
と、悩んでいると、彼女はもう機嫌が直ったらしい(すごいな)。
「ねねっ、馬はどこにいるの? 私馬なんて初めて乗るよ〜」
『移動用に用いる馬は大人しいものが多いから大丈夫ですよ』
「本当? よかった」
いきなり乗馬なんて出来ない。けれどカルロがそう言うんだ。きっと大丈夫だろう。
フレアンはここで待つように言った後、何処かへ行ってしまった。言われたとおり、大人しく待つ。
平原の先を見てみようと目を凝らすが……やはり見えない。それほど遠いのだろう。
「ねえ、ルーンはどこか悪いのかな」
『何です急に』
「だって、力が弱まってるもの。一緒に旅をするのは辛いのかな」
『ああ、そうではありません。これは故意的に、ですから』
よく判らないので、詳しく聞いてみた。カルロの説明はいつだってわかり易い。学校の先生とか似合いそうだ(敬語だし)。
『……というわけです。聞いてますか? 聞いてませんね』
「え!? いやいや聞いてたよ! 力を制御するアクセサリつけてるんでしょ!? でも……何で?」
『それも申し上げたはずですが……ですから、私もルーンも一応世界に名が知れているので、なるべく存在を隠すためです』
「そっ……そっか! そうだよね! ごめんごめん」
カルロの職業適性を考えてたとか知れたら、「私より貴方の方が必要ですよ」とか「私に出来ない事などありません」とか言われる。
カルロの嫌味は一日一回くらいがちょうどいい。
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