待ちぶせ 1 俺は合コンが大好きだ。 「じゃあな、セーギ。また後で!」 「おう。いいメンツ期待してるぜー」 適当に講義に顔出して、暇さえあれば合コンして。その合コンの資金調達のため、俺は今日もコンビニでバイトに励む。 せっかく大学進学を機に実家から出たんだし、これぐらいエンジョイしても罰は当たらないはずだ。 「おはようございまーっす」 部外者は出入り禁止の扉から店の裏に入ると、パイプ椅子に座って煙草を吸っていた店長と目が合った。 「おぉ、セーギくん!そうか、今日は5時入りだったかぁ。いつも深夜だから珍しいね」 「今夜は合コンなんスよ。店長はもう上がりっすか?」 ちなみに、俺の名前は決して「セーギ」ではない。 榊正義。正義、と書いて「ただよし」と読む。 「うん、そう。後はセーギくんと他の子に任せたよ」 「了解ッス」 制服に着替えて、俺はレジに立った。レジから見たコンビニは客として来た時と大きく違う。 「いらっしゃいませー」 客が入ってくれば明るく挨拶を投げ掛ける。そして、商品を持ってくれば金額をレジに打ち込む。素早く、正確にがモットーだ。 「相変わらず早いんだね、セーギくん」 同じシフトの店員に羨望の眼差しで見られて悪い気はしない。 「俺の取り柄ってこれくらいしか無いッスから」 「羨ましいよ」 レジに客が来ない時はこんな感じで話をする。少し話していると、新しい客が入ってきた。 「いらっしゃいませー」 さっきと変わらない挨拶をしてから、その入ってきた客に俺は目を奪われた。 すげー、美人だ…… いきなり固まってしまった俺に気付き、隣に立つバイト仲間が何か話しかけてきているのがわかる。しかし俺はその美少女を目で追うのに必死だった。 透き通りそうな白い肌、ツヤのある黒髪。まるで人形のような繊細な顔立ち。髪の色と同色のセーラー服は彼女の魅力を際立たせているようだ。 「……あの?」 うっわ、喋った!人形みたいな顔してっけど、やっぱり人形じゃねーのか! って、そうだ。感動する前にレジだ。ちゃっちゃとレジ打って名前聞いて、とりあえずメアドとケー番を! やべー。なんで俺、こんなに緊張して……。 「セーギくん?」 「い、いいいいらっしゃいませぇっ!」 「……お客さん、もう帰ったよ?」 何ですと? 俺がテンパってる間に帰っちまった……… バイトが終わって合コン会場へ向かっても、俺の気分は乗らなかった。 「オイ、セーギぃ、どうしたんだよ?」 「あぁ……」 それにしても可愛かった。あんな美人な娘は見たことがない。 「聞いてくれよ、セーギの様子がおかしいんだよ」 「いつもなら一番に女の子に飛び付くのに」 ダチが騒いでいるのにも振り向かず、俺はコンビニの少女について考え続けていた。名前は何と言うのか、年はいくつなのか…… 「セーギ、腹でも痛いのか?」 「あぁ……」 これは調べるしかないっしょ。 [次へ#] |