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待ちぶせ


俺は合コンが大好きだ。

「じゃあな、セーギ。また後で!」
「おう。いいメンツ期待してるぜー」

適当に講義に顔出して、暇さえあれば合コンして。その合コンの資金調達のため、俺は今日もコンビニでバイトに励む。
せっかく大学進学を機に実家から出たんだし、これぐらいエンジョイしても罰は当たらないはずだ。

「おはようございまーっす」

部外者は出入り禁止の扉から店の裏に入ると、パイプ椅子に座って煙草を吸っていた店長と目が合った。

「おぉ、セーギくん!そうか、今日は5時入りだったかぁ。いつも深夜だから珍しいね」
「今夜は合コンなんスよ。店長はもう上がりっすか?」

ちなみに、俺の名前は決して「セーギ」ではない。
榊正義。正義、と書いて「ただよし」と読む。

「うん、そう。後はセーギくんと他の子に任せたよ」
「了解ッス」

制服に着替えて、俺はレジに立った。レジから見たコンビニは客として来た時と大きく違う。

「いらっしゃいませー」

客が入ってくれば明るく挨拶を投げ掛ける。そして、商品を持ってくれば金額をレジに打ち込む。素早く、正確にがモットーだ。

「相変わらず早いんだね、セーギくん」

同じシフトの店員に羨望の眼差しで見られて悪い気はしない。

「俺の取り柄ってこれくらいしか無いッスから」
「羨ましいよ」

レジに客が来ない時はこんな感じで話をする。少し話していると、新しい客が入ってきた。

「いらっしゃいませー」

さっきと変わらない挨拶をしてから、その入ってきた客に俺は目を奪われた。
すげー、美人だ……
いきなり固まってしまった俺に気付き、隣に立つバイト仲間が何か話しかけてきているのがわかる。しかし俺はその美少女を目で追うのに必死だった。
透き通りそうな白い肌、ツヤのある黒髪。まるで人形のような繊細な顔立ち。髪の色と同色のセーラー服は彼女の魅力を際立たせているようだ。

「……あの?」

うっわ、喋った!人形みたいな顔してっけど、やっぱり人形じゃねーのか!
って、そうだ。感動する前にレジだ。ちゃっちゃとレジ打って名前聞いて、とりあえずメアドとケー番を!
やべー。なんで俺、こんなに緊張して……。

「セーギくん?」
「い、いいいいらっしゃいませぇっ!」
「……お客さん、もう帰ったよ?」

何ですと?
俺がテンパってる間に帰っちまった………


バイトが終わって合コン会場へ向かっても、俺の気分は乗らなかった。

「オイ、セーギぃ、どうしたんだよ?」
「あぁ……」

それにしても可愛かった。あんな美人な娘は見たことがない。

「聞いてくれよ、セーギの様子がおかしいんだよ」
「いつもなら一番に女の子に飛び付くのに」

ダチが騒いでいるのにも振り向かず、俺はコンビニの少女について考え続けていた。名前は何と言うのか、年はいくつなのか……

「セーギ、腹でも痛いのか?」
「あぁ……」

これは調べるしかないっしょ。


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あきゅろす。
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