純情ロマンチカ小説 私だけが知っている6/20 [注]相川視点です それはある日のこと。 街を歩いていたら、見知った人影を見つけた。 (あら美咲君じゃないの) 私は声をかけようとしたが、そのタイミングを逸してしまった。 なぜなら美咲君は、私の知らない女の人と(可愛い感じの女性で、歳は私より少し下くらいかしら?)笑いながら歩いていたからだ。 (なんて事も、もしかして彼女美咲君やるじゃない) 思わず、マジマジと凝視してしまった。 だが考えてみると、さほど不思議ではない。 彼はあの宇佐見秋彦と同居しているのだ。 人柄は折り紙つきである。 (以前、女の子にモテモテで困っていると言っていたものね) 仲睦まじく歩く二人を見ていたら、花屋の前で立ち止まり、なんとバラを購入した。 驚いたことに、美咲君は買ったばかりのその花束を、相手の女性に差し出したのだ。 (まぁ、なんてベタな……じゃなくって。 コレは絶対に間違いなし!) 私はこの決定的瞬間を、是非とも先生には黙っていなければと思った。 (先生ってば美咲君にご執心だもの。騒ぎになって原稿落としたらた〜いへん) 後日わかったこと。 彼女は恋人ではなく義姉だったらしい。 (なんだ、つまらないの) |