純情ロマンチカ小説 美咲も歩けば何に遭う? 月日 注意報発令 ここは丸川書店の三階にある編集部。 イイ歳して駄々を捏ねる我が儘男・宇佐見秋彦に翻弄されること、数分。たった数分だが、かなりのエネルギーを消費した気がする。 こんな事を毎回やらされているなんて、相川さんに多大な同情と尊敬の念を覚える。 ──俺なら無理だ。 素直に感心すると同時に、決して編集者にはなるまいと心に誓う。 「ほら、ウサギさん早く!ちゃんと相川さんの言う事聞いて、仕事する!」 ウサギさんの背中を押しながら叱り付ける。 「お前は俺より仕事が大事なのか」 ブスッとした顔で言い返される。 「何アホなこと言ってんだ 仕事しないと困るのウサギさんだろ」 「美咲……お前はいつも変な者に引掛かる。いいか──」 「わーかってるってば寄り道せずに帰るし、家着いたら電話するって」 ヤケクソで言った言葉に、念押しまでして約束させられた。 ウサギさん心配しすぎだろ。俺、これでも大学生なんだぞ。 編集部でウサギさんと相川さんを見送ると、自然とため息が漏れた。 …なんだか無駄に疲れたな。顔にかかる前髪を払いながら、もう一度ため息をつく。 ──早く帰ろ。 ウサギさんの言葉ではないが、こんな日はロクな事がない。特にココ丸川書店には、逢いたくない(厄介な)人物がいるのだ。 だが世の中そんなに甘くない。 エレベーターの前でその厄介な人物・井坂さんにばったり出会ってしまったのだ! [続] 2009-06-24 up |