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悪魔な貴方と総長と
幼なじみたちの。


教室から出た白石は真っ直ぐに屋上へと向かった。


先客の所為か、屋上の扉は開けっぱなしだ。

屋上に一歩足を踏み入れる前に、ボソボソと話す声が聞こえた。


白石はそこで、ふぅ、と息を吐き、一歩踏み出した。






「………」


「…透?」

「……何か〜用?」



屋上で何か話ていた二人に三メートル程近づいて漸く、無言で見ていた白石に、二人が気付いた。


それにまた、溜め息をついて、白石は佐藤を見る。




「…久しぶり、佐藤。記憶は戻ったのか?」


「記憶〜?さぁ、どうだろう?」



白石に質問された佐藤が、小さく笑いながら、答える。


「夏紀っ!」


佐藤の答えたのと同時に、一条が声を上げた。



「一条。」

佐藤に目線を合わせていた白石が、一条を呼んだ。
落ち着け、と、ちらりと一条を見て、また佐藤に目を向けた。


「…あっはははははっ!!!」

そんな光景を見ていた佐藤が、いきなり笑いだし、一条は眉を寄せた。


「何がおかしいんだよ…」

一条の低く発した声に、笑うのを止めた佐藤が一条を見る。


「前から思ってたけどさ〜、なんで、あんた達の方が俺の事に必死な訳?…赤の他人なのに…」


それに、白石が答える。


「…お前が忘れた記憶の中に答え、あるんだよ。」



「へぇ〜…答え、ねぇ…」


白石の言葉を聞きながら、また小さく笑う。



「…まだ、戻ってないんだな…」



「…思い出して、俺に良いことある〜?」


一条の言った言葉を聞いて、佐藤が反応する。

佐藤は、何故か自分でも分からないが一条の事を敵視している。



「…ある。」

「透?」



少しの沈黙の後、白石が答えた。

それに反応したのは、佐藤よりも一条の方が早かった。


「例えば?」


佐藤は、なんの感情も読み取れないような顔で白石に聞く。
それを一条は黙って聞いていた。

そして白石が言った言葉は二人が想像していなかったことだった。




















「三谷 翠と仲良くなれるぞ、佐藤。」









「え?」


「透っ?!」



「いいか、佐藤。お前の記憶が完璧…いや、…半分以上でもいい、お前の記憶喪失前の人格を思いだしたら、三谷はお前を怖がらないはずだ。(多分)」


など、効果音をつけるならドーン。そんな音が聞こえてきそうな、白石の発言を聞いた佐藤はそれに


「まじで?」


と、食い付いた。


「まじだ。」


うんうんと二回頷く白石。

「…俺、頑張ってみる。」

「おう、頑張れ!」



佐藤がキラキラした目で白石をみながら、頑張る発言をすると、白石も応援発言をした。


(何年ぶりにキラキラした目を向けられた…)


と、白石は一人、心の中で感動していた。


「お前…、名前…白石 透だっけ?」

「あぁ」

「お前、記憶喪失前から俺のこと知ってるんだよな?」


佐藤が首を捻りながら聞いてきた。

それをうん、と答える白石の肩をポンと叩いて、

「なんとなく、わかる気がするかも〜?」


と、佐藤なりに思い出そうと頑張った。


「ははっ、ゆっくりでいいんだよ。」

必死に自分の記憶を思い出そうとする佐藤がおかしくて、吹き出してしまった白石。


「で、お前は、一条、歩、だっけ〜?」


「あ?」


「俺と〜、翠の邪魔するやつ〜」


のんびりとした口調で言ってはいるが、少しばかり怒りが入っている。


それに反論しようと一条が口を開いた。


「邪魔してねぇ…ありゃあ…」


が、自分でも少し分からない。


「俺と翠の邪魔しないでくれる〜?」


「はっ、お前は邪魔かも知らねーが、俺は止める気はねぇ。」


と、一条も分からないまま、挑戦的に返してしまった。



「………」
「………」








「…久しぶりの幼なじみの再会なんだから、もっと穏やかに出来ないのかよ…はぁ…」


という白石の溜め息が屋上の床に吸い込まれていった。

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