悪魔な貴方と総長と 熱 「…翠」 眠っていた俺の耳に、佐藤の声がはいってきた。 瞬間、起きなければ、と意識する。 だけど、寝起きですぐに体がおこせる訳なくて、首だけ佐藤がいるだろう場所に向けた。 「な、に…」 「おはよう」 返事を返したのに、挨拶がかえってきた。 もちろん、今が朝じゃないことはわかる。 けど、佐藤がそう言ってるんだから、そう返さなないと…。 「おはよう」 聞いて満足なのか、ドアにもたれ掛っていた佐藤が、笑顔で近付いてくる。 その間、俺の体に力がはいるのは仕方ない。 ギシリ、とベッドのスプリングが聞こえて、佐藤が側に座った。 「今日ね〜、翠のクラスの白石って奴が〜、翠はどうしたって聞いてきたんだ〜」 にこり、と笑いながら、布団の中に収めていた手に、ゆっくりと指を絡まれる。 「なん、て言ったの」 「翠は〜、今熱で寝込んでる〜って言った〜」 この熱も、自分の体の自己管理が出来てないから、とかじゃない。 「まぁ、熱出たの殆ど、俺のせいかなぁ〜?」 クスクス、と軽く笑いながら、額にキスされる。 「白石、は納得したの」 白石は納得したかな? あんまり佐藤を刺激しないで欲しいんだけど… 今怒ってるか、わかんないけど… 「あぁ〜、納得は〜してない」 「して、ない?」 「うん」 してない? 納得しなかったんだ? じゃあ、どうしたの? と聞くことは止めた。 佐藤にとって、このことは、どうでもいい事らしく、今度は、俺の髪の毛に指絡めて遊び始める。 そして、ふと思いだしたように、話し始めた。 「全然信用してなかったから〜、見てもらお〜と思って〜」 は? 言うと、開けっぱなしであっただろうドアから、コンコン、と音がして― 「入ってもいいか?三谷…」 久しぶりにみた… そこには、白石が立っていた。 表情は、よくわからない顔をしていた。 それに対して、何がおかしいかわからないが、佐藤がクスクスと笑いながら、俺の髪の毛をまだ指に絡めて遊んでいた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |