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WE love gatekeeper!!
雨と飴

あれから暫くして鼻血が止まった敬助に、今日は暴れたりしないで自室で休む事、と念を押して帰した。
それから残りの休日も問題なく過ぎた。まぁその際10件程電話があって、9件が兄からだったことに顔を引きつらせたことはあったけど。
その内の1件は妹の桃花からだった。篤から聞いた話があるから、なんとなく桃花とは話辛い。もう結構前だから時効だとは思うけど…。
きっと兄さんからは実家に帰るのはいったい何時になるんだ、って電話だったと思う。
ちょっと、煩わしいので保留中だ。絶対話長くなるからね。

この守ヶ丘学園は驚く事に4月、6月、8月、と1ヶ月置きにテストがある。その内6月と10月のテスト期間が長い。
2週間もあって、1教科2回もテストがあったりする。
しかもこのテスト結果だけ、親御さんにそのまま連絡がいっちゃうもんだから、生徒たちは必死になってテスト勉強してたりする。
だから6月、10月は問題を起こす生徒が減る。減るって言うより、ほぼ居ない。
この時期、歓迎会が終わるとこういったテストがあるから校内はピリピリした緊張感があって、呼ばれない限り、俺は近付かない。
だって自分がテスト受ける訳じゃないのに、その雰囲気に当てられて俺まで緊張しちゃうんだよね。

まぁ、何が言いたいかと言うと、取り敢えず新入生歓迎会が終わると門衛の俺は暇なんだ。
今日も学園訪問者はゼロで、テスト期間中の3日目である昼現在、外は大雨でーす。梅雨入りしちゃったんだもの。
とか、ボーッと雨空を見ながら頭の中で語ってたら内線電話が鳴った。
驚いて、ちょっと飛んじゃったのは秘密だ。

「は、はい門番塔の宮野です」

「あ、私私ー私だよー」
「…理事長、ですか」

電話は理事長からだった。俺未だに理事長がどこまでが本気でどこからふざけてるのか分からない。
「あの、何かありました?」

「あ、うん。あるって言うか伝え忘れてたんだけど、歓迎会の時、私が綾太君に頼んでたものなんだけど、あれ今日中に私の所に届けてくれないかな?」

「あぁ、はい、わかりました。今から準備してお持ちします」

「ごめんね、すっかり忘れてて…ほら私、結構おっちょこちょいだから」

自分でいいながら、ふふふ、と笑ってしまう理事長。

「自分でおっちょこちょいとか言っちゃったら、自然なおっちょこちょいじゃない気がします。」
「えぇ!?そんな感じ出ちゃう?」
「俺がそう思うだけですので、…理事長、遊んでると柊さんに怒られるよ…」

はぁ、とため息を吐きつつ理事長に言うと慌てた感じで、それじゃあ、よろしく、と言って電話が切れてしまった。

…あの焦りっぷりは本当に柊さんきたのかな?


まぁ俺も柊さんに会ったら怒られるんだろうな。
宮野君、君まで忘れていたんですかって。

新入生歓迎会の時、リレーが始まる前に理事長から言われた仕事っていうのが、お昼前に校内の防犯カメラとグラウンド全体を写し出せる監視カメラのスイッチを入れることだった。

あの時、申し訳なさそうにしていた理事長だったけど、あんなもの仕事の内に入らないくらい簡単なことだ。門番塔にある機械に俺の持ってるカードキーを通して、スイッチをいれるだけだから、特に難しくない。
最初はもちろん、怖かった…。なにこの機械、っておもった。
校内のカメラは職員室にあるから、それも同じように操作して完了だ。
スイッチをいれただけの簡単な作業は、俺のなかで記憶にも残らなかったらしい。
ありえない、俺仕事ちゃんとしてないじゃん。
だめじゃん、門番として。

落ち込んだけど、はやく理事長に持っていかないとだめだ。
最初にその映像を見れるのは理事長だから、理事長が確認しないと後の人が見れない。
もちろん、不審者が映っていたりしたらすぐさま理事長が警察に連絡をいれる。
…今までそういうことなかったけどね。


机の引き出しから映像が入ってるUSBを雨から守るためのケースをだして、門番塔の分をいれる。職員室のも取らなきゃな…。

「頑張るぞー」

と、テスト期間中の緊張感がたっぷりの校内に入るため気合をいれてみた。



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