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〜龍と刀〜
後夜祭!U
ゆったりとした足取りで向かって来たのは、竹刀を数本持っている幸輔だった。

「やあやあ龍神〜。彼氏彼女同士で早速どんな遊び〜?やるのは勝手だけどさ〜せめて人が居ないような場所を選んで−−」

「うるさいなぁ!別にそんなんじゃありません!とにかく先輩、これ解いてくれませんか?」

長引きそうな幸輔の話を怒鳴る事で遮り、自分のペースに引き込んだ。とは言うものの、幸輔に喋りで勝った事は無いのが現状である。いつも、知らない内に呑み込まれているのだ。

「ははぁ〜、これは八雲だけの力じゃないね」

「それはどういう意味ですか」

「いやね?八雲の影ってそんなに強度が高い訳じゃないんだけどさ〜。何かこれ、妙に強い防御の術式が込められてるというか……」

思い当たる節は?と聞かれ、ほんの少し前へと記憶の糸を辿ってみる。
紗姫の影に絡み付かれた時、月華の雰囲気が変わった。即座に当たりを引いたのだ。

「月詠か……!あいつ!」

「ん〜月詠?誰だっけ……そうだ、夜の神格、月の神格っていう神様じゃない。何でそんなのに取り憑かれてんのさ〜」

「話せば少し長くなるんですが……実は……」

陽は午前中にあった出来事を、かなり省いて説明をする。新しくアスラという敵が出現した事、月華の体に神族が封印されていた事、それが目覚めた事。

「なるほどなるほど〜。僕が文化祭の裏情報を流している間にそんな事が」

「裏情報って……」

「龍神も知りたい〜?おもしろネタから危ないネタまで多々品揃えがありますよ〜。今なら定価五百円!」

「金取るのかよ!あの、良いですからマジで早く壊してくださいよ」

ツッコミをするのも面倒になってきたのか、幸輔にせがむ陽。そろそろ足も痺れて来る頃だろう。

「仕方ないなあ〜。じゃあやるから、ちゃんと受け身取ってよ?」

「は……受け身?」

そう言って幸輔は足元に竹刀を置き、陽から距離を取る。そして、まるで陸上競技のように体を屈め、指を地面に。この体勢は……。

「クラウチングスタート!?何で?マズいぞ、嫌な予感が……」

陽の予感は的中。
幸輔は強く地面を蹴り、懐へ迫って来たのだ。
突然の出来事に身を強ばらせながらも、冷静に、足元に投げられた竹刀を握る。
その時にはもう、幸輔は足のバネを利用して跳び上がっていた。ここから予測出来る攻撃と言えば、アレしかない。

「龍神、いっくよ〜!」

「間に合え……!」

放たれたアクロバティックな蹴りは、吸い込まれるように竹刀の腹を歪ませながら、陽にも衝撃を与える。
足に絡まれた影がバリバリと音を鳴らしながら剥がれているが、まだだ。まだ足りない。
着地した幸輔が間髪を入れずに左足による回し蹴りを見舞う。

「ん〜後は任せた〜」

「これぐらいなら、なんとか……」

しかしそれでも取れないので、陽に全てを任せる事に。
ぐらついた体を元に戻す反動を利用し、一気に引き剥がそうと試みる。渾身の力を込めて足を振り上げた。

「ふぅ……血が止まるかと思ったぞ……」

何とか影から脱出した陽はがっくりと肩を落とす。

「良かったね〜」

「まったく。何でこんな事になったんだか……っと少し目立ってしまったみたいだ」

「じゃあ……逃げようか〜?」

「そうしましょう」

いつの間にか集まっていた観客たちの視線から逃れるため、陽と幸輔はその場を立ち去った。

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