〜龍と刀〜
後夜祭!T
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だいぶ日も暮れて来た中、陽と月華、そして紗姫は文化祭の後片付けで忙しい学校へと到着した。
「こうして来ると、何かアレだな……サボったみたいで他のヤツらに悪い気分だな」
「陽ちゃんが言うの?」
「何だお前、俺がサボったとでも言いたげな顔しやがって」
「あら、龍神君ってこういう行事とか嫌いな類の人じゃないの?てっきりサボってたのかと」
口が災いの元、とは良く言った物である。最初にこの言葉を作った人はこんな気持ちだったのだろうか、と思いながら校門を潜っていく。
活気のあった屋台のテントも、今や骨組みと余った机などに分解され再び仕舞われるのを待つだけとなり、綺麗に飾られていた窓ガラスも、もうほとんど面影を残してはいなかった。
「なんだろう……こういうの見てると寂しいよね」
「そうね。でも、来年だってあるじゃない?それに後夜祭も、ね」
陽の記憶を辿ると、後夜祭は確か午後六時から開始のはずだ。しかし、それまでたっぷりと時間がある。
忙しく奔走する上級生たちが居るのに、自分たちだけのんびりしているというのも後味が悪い。こうなってしまったら、やれる事は決まったようなものだ。
「俺もクラスの方を−−」
言いかけて、何者かに頭を叩かれた。別に痛いという訳でも無いのだが、気分は良くない。
「もう!何やってたの!?二人が居なくて客が減ったんだよ?」
陽の頭を板で叩いたのは、陽に営業スマイルをぶち込んだ女子生徒だった。
「あ、ごめんね。ちょっと家の用事があって……」
「月華ちゃんは許す!でも、龍神は許さ、ない……?」
女子生徒が言葉を濁したのも当然。今の攻撃によって、陽の我慢値が振り切れたのだ。無言の殺気、とまではいかないなりも、怒気。
「……せっかくクラスを手伝おうかとも思ったが、いらないみたいだな」
「ご、ゴメン!今のナシ!忘れて?あたしは龍神さんが来るのを待ってました!だから手伝ってください!」
「いや、言われなくてもやるつもりだから安心しろ」
ささやかな仕返しとでも言おうか。女子生徒をからかってみたのだが、どうやらそれが紗姫や月華には気に喰わなかったらしく。
「……!?」
「それじゃ、あたしは先に行ってるから。二人とも早く来なよー」
「うん。すぐ行くね」
手を振って別れると、足に感じていた圧迫が更に度合いを増す。
「これはどういうイジメだ?」
率直な感想だった。
陽の両足には紗姫の出したであろう影が、地面に縛り付けており身動きが取れない。月華は何もしていないのだが、雰囲気が変わっているのだ。
「あぁ……前にもこんな事された気がする−−って待て!置いてくな!」
動けない陽は必死にもがくのだが、影がそんなに簡単に外れないのは分かっている。
周りから見れば、遊んでいるようにしか見えないのだ。しかし今日が文化祭という事もあり、パフォーマンスをまだやっているのだと誤認されてしまった。これはこれで恥ずかしいのだが。
「くっ……こんな事のために繰影を教えてるんじゃねえのに」
愚痴を呟きながら脱出方法を考えていると、前方から良く見知った人間が歩いて来る。
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