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〜龍と刀〜
突入!夏休みY
その後、二人に首尾を聞きに、もといからかうために陽は歩き出した。

「おぅ……思ったよりも酷い有り様だな……」

予想外の状態に顔を歪ませる。いつ着替えたのかは分からないが浴衣を着ている井上と中島。体の至る部位に傷を負っていた。
まずは顔。頬はもちろん真っ赤になり、所々内出血をしている。中島は眼鏡にひびが入っていた。
次に手足。ここは一番分かりやすい傷跡である。何かが巻き付いたような形。こんな事を出来るのはあのメンバーの中に一人しかいない。これ見よがしに影を使ったのだろう。さすがに同情する。

「あー……何かわりいな。今回は俺が悪かったと思う」

素直に謝ってやると二人はきょとんと陽を見て、こう言った。

「何で龍神が謝るんだよ?俺らが勝手に階段から転がり落ちただけだぜ?」

「それを助けようとした僕まで巻き添えになったみたいだけど」

「……まさか!?龍神のトラップが仕掛けてあったのか!」

痛められすぎたのか、記憶が錯綜しているみたいだ。二人が言っているのは、つい先日の井上がふざけていたら階段から足を滑らせたという話であり、今の事じゃない。記憶操作の魔術を使ったんじゃないかとも疑ったが、そんな心配は要らなかった。何故なら紗姫は記憶操作が出来ないと自分で言っていたからだ。

「いや、思い出さない方が身のためだな……」

小声でそっと呟いた。自身の保身のためにも黙っておくのが一番良い選択だ。

「はぁ……なんか階段から転げ落ちるし怪我するし、今日の肝試しはナシにするか中島?」

「そうしようか。こっちのモチベーションも下がったし……せっかくのサプライズイベントだけど、明日に回そう」

「肝試し?」

運ばれて来た夕食の豪華さに気を取られながらも話に加わる。

「あれ龍神に話して無かったっけ?実はね、この旅館からちょっと離れた場所に有名な心霊スポットがあってさ……」

中島が少し低めのトーンで話をするのを見て陽は、つくづくこういう演技が上手いよな、と感心。

「しかも最近頻繁に何かが起こるってネット上じゃ大騒ぎ。行った人間が帰って来ないとか、熊よりデカい人間が居たとかね」

「……都市伝説ってレベルの話だな。行った人間が帰って来ないなんてのはどうやって知ったか−−」

「うおぉい!龍神、それ以上夢の無い事を言わないでくれ!せっかくの楽しみが無くなるじゃねえか!」

肝試しとかが苦手そうな井上が大声で陽を遮る。そこまでして何かが起こって欲しいのだろうか。

「夏ってのは男女の仲が急激に接近するものなんだ!夏の魔力なんだ!ここでカッコいいトコを見せれば……ハッピーエンドになるかもしれないんだぞ!?」

「お前に限って肝試しで良いところを見せるのは不可能だ。一つ忠告しとくが……肝試しって言って本気で怖がるのは月華ぐらいだ」

紗姫はもちろん余裕だろう。春空は……多分大丈夫、だと思う。

「でも、何かが起こるっていうのはマジらしいよ。しかも、ごく最近になってから……そう。この旅館が建てられてから、ね」

中島が意味深な発言をする。
もし、本当に何かがあるなら依頼との関係性も調べなければならないし、第一にこのメンバーを危険に曝す訳にもいかない。だったら答えはもう決まっている。

「やるぞ」

「……え?」

「肝試し、今夜早速決行だ。進行ルートの作成は中島に頼むぞ」

急にやる気を出した陽に二人は首を傾げたが、最初から肝試しはやる予定だったのでテンションを上げる事にした。

「ふっ……僕を誰だと思ってるんだい?進行ルート、セッティング諸々も完了済みさ!」

「井上、今回はお前の頑張りも入ってくるからな。精一杯怖がらせろ」

「任せろ!俺だってやる時はやるんだぜ?」

そう言って三人は握手を交わす。当然、井上の時だけはキツく。
失敗は許されない。皆を守るためにも、絶対に。

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あきゅろす。
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