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〜龍と刀〜
突入!夏休みU
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陽が目を(完全に)覚ますと、そこに広がっていたのは一つの島とキラキラと光る海面であった。
それについての感想を述べようとした、ちょうどその瞬間。

「あれは……まさかな」

「たつが−−ごふぁ!」

何やら前方から物体が飛んで来たみたいなので、悪いとは思いつつも、手に持ったカバンを力の限りに振り回した。飛来した物体は海に落ちたらしい。

「龍神と八雲さん?もしかして君たちも春空さんに呼ばれた口?」

話し掛けられて振り向くと、そこには……知らない人が居た。

「誰だお前?紗姫の知り合いか?」

「私も知らないけど……誰かしら」

「……僕の認識ってメガネだけ?いや、ほら中島だよ」

そう言ってポケットから眼鏡を取り出すと、陽も納得したみたいで、大きく頷く。
どちらにしても、紗姫にとっては知らない人物だったらしいが。クラスも違うので、仕方ないと言えば仕方ない。むしろ、何故中島が知っていたのかが疑問である。

「おお!中島か。メガネ掛けてないと誰だかわからねえな……それで中島、ここで何してんだ?」

「龍神、本気で分からなかったんだ……実は春空さんの家が経営してるっていう旅館に呼ばれて来てるんだよ。なんでも、タダで泊まれるらしいから。ここじゃなんだから歩きながらでも話すよ」

自分の認識レベルが眼鏡だけという現実を真に受け、声のトーンがかなり低くなっている中島。

「春空って金持ちなのか……?すげえな、あの旅館って全国域で有名なやつだろ。俺でも知ってるぜ?」

陽は春空の家の凄さに感嘆する。実際、陽自身もそれなりに金はあるのだが、さすがに桁が違う。

「ねえ、龍神君。そろそろ触れてあげたら?溺れてるんじゃない?」

紗姫が泡立つ海面を指差す。どうやら先程吹き飛ばした物体は井上だったみたいだ。

「やれやれ……井上ー、バカやってないで早く戻って来いよ。あぁ、バカにバカをやるなってのが無理な問題だったか」

バシャ!バシャ!と白波を立てて必死に前へ進もうとしている井上。しかし、流される一方だ。本当にマズいのではないだろうか。それを分かっている上で、ここに居る誰もが助けに行かないそんな状況。人望が無いとかいう易しいレベルの話じゃない。

「あいつ、泳げないのかよ」

「……え?」

今頃気付く一同。

「大丈夫です。あの辺りは浅瀬ですから……」

背後から聞こえた声に振り向いてみれば、白い少女が立っていた。

「龍神さんに八雲さんも、今日は来てくれてありがとうございます」

「望ちゃん久しぶりね。私たちって呼ばれたって事になってるのよね?じゃあ、他にもお客さんが居るのかしら」

「いえ、今日はここの開店祝いみたいなもので私たちと従業員さんしか居ませんが……どうかしました?」

「んー、私、人が多い所って苦手だから」

この言葉を聞いた陽は小声でこう呟く。「そんな格好して嘘つくなよ……」と。

「では、昼食の準備もしてありますので……ご案内します」

そして四人は春空の家が経営をしているという旅館へと歩き始めた。未だに溺れかけている井上を置き去りにして。

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