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〜龍と刀〜
深まる謎
*****


午前の授業は当然のごとく睡眠学習。大きな事と言えば、国語の小テストで高得点を取ったので、井上に見せつけていたぐらいだ。その他には、何があったのか、誰とどんな話をしたのかすら記憶に無い。

「龍神に点数負けたのはショックだ……」

「まだ引きずってんのか?どうせバカなんだから諦めろ。中島並みに点数取れるやつが言うセリフだ……時に中島、何点?」

「ん?九十だけど」

二人はこの瞬間、越えられない壁を感じたという。
三人が昼食を食べていると、気の抜けた効果音の後に放送が掛かった。

『一年七組の龍神君、至急剣道部部室まで。繰り返します……』

「俺かよ……」

「部活なんてやってたんだ」

「まあな。一回しか行ってないけど」

溜め息混じりに立ち上がり、まだ残っている弁当に蓋をする。

「いってら〜」

「……具が一つでも減ってたら大変な事になるぞ。覚えとけ」

井上を睨んでから足早に教室を後にした。


*****


剣道部の部室に行くには一度校舎を出なければならない。

「誰も居ないな……よっと」

だが陽はそういうことをまったく気にはしない人だ。一番近くの窓枠に足を掛けて外に出る。勿論戻る時もこの窓を使うつもりだ。
朝に降っていた雨はすっかり上がっていた。

剣道部の部室前に着いた。人の気配はする。呼び出された理由が分からない。

「昼休みって言ってたか?聞き間違いじゃなかったら、俺は確かに放課後だと」

木の枠にガラスを取り付けただけの簡素な戸をゆっくり開ける。
中に居たのは、昼食真っ最中の幸輔だった。

「先輩?あれ、もしかしてやっぱり昼休みだったのか?」

購買部で買ったと思われる焼きそばパンを食べ終わると、ようやく幸輔は口を開く。

「ごめんごめん。今呼び出したのは別だよ〜。ほら、今まで集めてた分の情報を公開しようと思ってね〜」

「今日は式紙の方じゃなかったんですか……で、情報ってのは?」

パンの袋を一纏めにしてゴミ箱へ投げる。袋は見事ゴミ箱へ入り、それを満足そうに見ながら話し出した。

「今回重要な情報は、何で龍神が狙われてるかって事だね〜」

「分かったんですか、理由が」

陽は身を乗り出して、幸輔の情報を聞こうとする。それを宥めるように手を出して、その場に座らせた。

「理由は、ね。じゃあ、簡単に言うよ〜?やつら『永遠の闇』は龍神に“鍵”を奪われるのが嫌らしいね〜」

「“鍵”……?」

「うん。それが何を意味してるのか、そこまでは全く調べられなかったよ。心当たりは無いか〜?」

腕を組んで、“鍵”という言葉について考えてみる。陽の頭に浮かんだのは何かの魔導具じゃないか、という物。

「家の鍵なら元々無いんで、多分魔導具だと……だけどそんな名前の魔導具なんて聞いた事は……」

「“鍵”っていうのはきっとそいつらの中での通称なんじゃないかな。僕もそんな魔導具は知らないからね〜。それ以前に鍵の形をしたのなんて何千、何万なんて単位だし?」

そこで幸輔は一息付くために紙パックのジュースを開ける。余っていたもう一つを陽に投げて渡す。
それを受け取ると、素早く開封して口に含む。

「ま、それが分かった事。それで、分からなくなった事が増えるんだよ。龍神を捕縛するという目的がね〜」

「あ、そういえば……奪われるのが嫌なら抹殺だけで用は足りる。前にも考えたけど、秘密裏に動けば奪われるなんて可能性すら生まれない……」

「中心に居るのはなぜか龍神なんだよ。と、なると“鍵”は龍神の近くにあった物になるね?」

必死に思考を巡らせる陽を邪魔するかのごとく授業五分前を告げるチャイムが鳴る。

「そこら辺はまたボクの仕事さ〜。龍神はいつ戦っても良いように剣術を磨くことを勧めるよ〜。当然、情報料は加算でね」

「分かりました。任せますよ」

「任せなさいな〜。あ、放課後も忘れずに。それじゃお先に〜」

それだけ言うと幸輔は身軽な動きで走り去った。

「っといけね。授業だ」

早く行かなければ窓から戻れなくなるかもしれない、そう思いながら陽も走って教室へと向かう。

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あきゅろす。
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