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〜龍と刀〜
成長と寂寥とT
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――こちらは放課後。結局二人は陽が何処へ向かって何をしているのかという情報は一切得る事が出来なかった。それは幸輔も同じようで、メールでの内容も[ごめんね]の一言のみ。一体何をしているのか気になるが、置手紙があったという事実で無事であるというのは保障しても良いのだろう。そう割り切って家路に就こうとする。

「どうしたの紗姫ちゃん?」

教室から出てすぐの事だった。月華はマフラーを巻きながら紗姫に問う。何故か立ち止まって校庭の方をじっと見ていたからだ。誰か居るのか、と月華も隣に並んで窓の外に目を向けるが練習している部活の生徒だけだ。至って普通の光景。

「ちょっと気になってね……行ってみましょ」

「う、うん?」

「気のせいだと良いんだけどね」

それから早足で校庭へと向かう二人。外はいつも以上に冷たく刺すような風が吹いている。マフラーを上げ、口元までしっかりと隠す。やはり外に出てみても何ら変わったような部分はない。

「……気のせいだったかな」

「何か見付けたの?」

「何と言うか、嫌な気配っていうやつがね――」

言い掛けた途端の出来事だ。突如として響く轟音。巻き上がる土砂。吹き付ける突風。

「ケホッ……なんだなんだ?」

「隕石じゃね?」

「宇宙人とか居るの!?ってか大丈夫なのかな……?」

ざわつく周囲。まだこの場には沢山の下校中の生徒が残っている。中には既に携帯を構えてカメラの準備をしている者も。しかし、その浮ついた空気もすぐに変化。悲鳴へと。
巻き上がる砂の向こうに漆黒の影。風の合間に見えたその数、二十体程。人型で、ほぼ全身を漆黒の鎧で包んでいる。

「ど、どうするの……!?」

逃げ惑う生徒たち。中には果敢にも友人を助けようと金属バットで応戦している者も見られるが、通常の人間の腕力で敵うような相手ではない。
どうしようかと必死に考えてみるが、それよりも先に動きがあった。

「結界……!」

まずは校庭を包むように、そしてもう一つは学校全体を覆うように大きなドーム状の透明な壁。二重にする事で被害を抑えようという意味合いがあるのだろう。そして結界内に居る人間はその場から立ち去ろうと、何事もなかったかのようにそれぞれが外へ出て行く。

「いや〜久々に補習喰らったけど対応出来たから良かったよ〜」

背後から急に現れたのは幸輔だ。その手には複数枚の紙の束。式紙だろう。それを上空に投げると人型となって校庭側の結界内へ。

「先輩……」

「救助とか避難とかはこっちでやっておくけど……任せても良い?それとも、ボクも加勢する?まあもちろん終わったら加勢するけどね〜」

式紙に出来るのはインプットされた行動を実行する事だけ。きっとあの白い人型式紙は戦闘行為を行わず、中に取り残された生徒や教師の救出を主とするはず。月華と紗姫に大規模且つ正確な記憶操作などはまだ難しいが幸輔ならばそれは可能だろう。時間は掛かってしまったとしても。

「やろう!」

真っ先に口を開いたのは意外にも月華だった。その言葉には強い決意が含まれているようだ。

「そうね……!」

「じゃあ決まりだね〜?任せたよ〜」

そう言って幸輔は再び複数の式紙を地面へとばら撒く。術式の準備だろうか。
二人は結界内で暴れている多数の影に向かって走り出す。

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