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〜龍と刀〜
予感
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――昼。このような事態を一番把握していそうな人間が居る。今はその情報網を頼ってみるのが良いだろう。そう思って月華と紗姫の二人がやって来たのは上級生の教室がある階だ。目的地はもう決まっている。

「あのー、すみません御門先輩居ますか?」

入り口付近で話をしていた男子の集団に臆する事なく話し掛け、呼び出したい人物の所在を問う紗姫。対して月華は意外とこういう場所では人見知り気味になってしまうようだ。

「ん?多分居るけど……おーい、みっちゃん!下級生来てるけど!呼んだのか?」

「いやボクは呼んでないよ〜。まあ用事あるんじゃないかな?同じ剣道部だしね〜」

「あれ?そう言えば最近部活行ってないよな?」

「……ボクも忙しいからね〜。というか主力は部長とかだし行かなくても良いと思ってるよ」

呼んでくれた男子生徒と会話を交わしながら歩いてきたのは幸輔だ。内容を聞いていると相変わらずのらりくらりと適当に受け流しているようにも思える。それに剣道部の主力となれるのは言っている本人、そして陽と紗姫だ。

「お待たせ〜。廊下さむっ……何かあった?浮かない顔してるけど?」

「先輩、陽ちゃんがどこに行ったか分かりませんか?」

「ほう……と、言うと?」

「詳しくは知らないんですけど、朝から居なくなってて……」

寒いのが苦手なのか腕を組むようにして体を擦りながら聞く幸輔。しかしどうやら幸輔も知らないようで、眉間に皺を寄せて何かを考えている様子。

「ボクは特に何も聞いてないけどな〜」

「そう、ですか……」

「連絡は取れるの?」

「圏外になってるみたいです」

もしかしたら今なら繋がるかもしれない、と紗姫は電話を掛けてみたようだったが、そこから流れるのは自動音声。あの置手紙はどういうつもりで書いていたのだろう。行き先で繋がると陽は思っていたが、実際に行ってみたら繋がらないという事なのかもしれない。

「やっぱりボクは知らないけど……これって龍神が自分の意思でどっかに行ってるって事なんでしょ〜?だったら別に気にしなくてもいいと思うよ〜。男なら誰しも自分を鍛えたくなる事があるからね〜」

「そういうものですか?」

「……何か凄く適当な気がするわ」

「まあまあ〜。一応調べたりこっちからも連絡付くか試してみるけど……なんとなく大丈夫な気がするな〜。持ち物次第では依頼があったとかかもしれないし。最近じゃ剣凰に回さないで別で処理してたけど、どうしてもそれじゃ間に合わなかった〜とかね」

依頼というのは周囲に被害を及ぼす魔物の討伐任務だったり、個人でやらなければならない書類の整理だったりと幅が広い。所属流派の下の人間にはあまり関係のない話の場合が多く、これらは大体が頭首の領分。考えられるとしたら頭首代理である陽に課せられた任務であると考えるのが妥当ではないだろうか。

「何だか難しい世界です……」

「うーん……月華ちゃんのお父さんなんかもたまに居ないのはそういう理由なんだよね〜。忙しさで言うのならあの人が一番だと思う」

だから、と幸輔は付け加えて。

「龍神なら大丈夫だと思うよ〜。あれでもこの前――っとこれはまだ内緒だったかな。それじゃ〜ね〜」

手を振って、これで話は終了だという合図を出す。確かに時間も時間だ。ここで切るのが無難だろう。
二人ともまだ不安そうな顔をしているが、それはきっと連絡が付かないからだ。

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あきゅろす。
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