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〜龍と刀〜
行方
*****


指定された通りの時間に新幹線に乗り、揺られる事数時間。目的地への到着だ。時間帯や季節も関係あるのだろうが、ホームに降りたっても人は疎ら。陽としてはこのくらいの静かな空気の方がありがたいが。

「……着いたは良いんだけど」

ホームに立てられた駅構内地図の前で唸る陽。それもそのはず、着いたらどうしろという指示が無かった。聞き漏らしてはいないはず。だからこその連絡だ。

「……」

数コール。まさかここまでやっておいて連絡が付かないなどという馬鹿げた話はないだろうと信じて待ち続ける事数秒。

[龍神様で御座いますね?]

電話に出たのは昼間とは別の声だ。

「はい、そうです。駅着いたんですけど、ここからどうすれば良いんですか?」

[では正面口に迎えを待たせていますのでそちらにお願いします]

「了解です。では……正面口、ね」

目の前の案内図を視界に入れ、現在地と正面口までの経路を頭に。それ程入り組んでいるという訳でもなさそうだ。これならば迷う事もないだろう。
それなりに重量のある荷物――重いのは白銀なのだろうが――を抱えて歩くとすぐに正面口とやらに到着。深夜という事もあり、建物の明かりが小さく輝いている。陽の住む街と比べればそんなに大きな建物も無く、夜空も綺麗に見る事が出来る。
陽が辺りを見回していると、横から声が掛かった。

「君が『剣凰流』の?」

「ええ。龍神陽です」

声を掛けてきたのは今時の若者といった感じのする青年だ。さすがに協会の人間と言えど年がら年中和服を身に纏っているという訳ではないようだ。

「これからどこに?」

「とりあえず細かい話は車の中で……って言っても僕も知らないんだけど」

「はぁ……」

男の後を追いながら陽は考えてみたが、やはり理由は分からない。正直な意見を言ってしまうと、この青年は自分よりも戦闘技能が低いタイプに見える。要するに彼は下っ端の人間のような気がするのだ。だからこそ知らされていないし、このような時間帯に運び屋をやらされているのでは、と。
駐車場に停められていたのは普通の黒い軽自動車。

「ごめんね、高級車じゃなくて。わざわざ目立つのは良くないから協会はこういう車の方が多いんだよ」

「そういうつもりは……でも確かにこういう部分に金を掛けるようには思えないですからね」

「言えてるね」

後部座席に白銀や荷物を、助手席に自分が。内装も至って普通。まさに普段使われているような車である。
青年が慣れたようにキーを差し込んでエンジンを掛けると、音楽が掛かった。ギターやドラムが激しいロック調の音楽だ。

「趣味合わないなら変えるけど?」

「あ、全然大丈夫です」

「そう?それじゃ、出発するね」

スムーズな発進。乗ってから思い出したが、自動車に乗るだなんてかなり久し振りのような気がしている陽。最後に乗ったのはいつだろう、と考えるくらい前だ。

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