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〜龍と刀〜
龍の名を冠する少年T
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夜、静かな森の中。
人も動物達も寝静まり、辺りは静寂に支配されている。

「ウォォォン……!」

突如、耳を裂くような雄叫びが空気を震わせ、続いて木の枝が折れる音が聞こえてきた。否、そんな可愛らしいモノではなかった。
近くまで来てようやく分かったのは、枝などという小さな物ではなく、木そのものが根元から折られている事。

その音の主は、巨大な岩。しかし、転がっているわけではない。しっかりと、その“足”でなぎ倒している。
岩の塊には、四本の足が生え、目や口、牙まで付いている。
姿で言うならば、狼の様だ。岩の狼。
大きさは、五・六メートルほどもある。
岩の狼は何かを追い掛けているらしく、黒曜石に似た小さな瞳には、獲物である人影が映っている。

「コイツ……しぶといなぁ、全く!」

岩の狼の前を走っていたのは少年。
その右手には金と黒で装飾された柄を持つ、細身であるが威圧感を振り撒く日本刀を握っている。

「そろそろ広い場所へ出るはずだ。迎え撃つぞ!」

どこからか発せられる貫禄のある男の声。
謎の声の言った通り、すぐに開けた場所へ出た。刀を、突進して来る岩の狼に向ける少年。雲が晴れ、月明かりに照らされる。
年の頃は十六、七の辺りだろう。髪は黒、岩の狼を見据える瞳も黒。怯える事なく毅然と立ち向かおうとする。

「力の加減には十分に注意しろ。前回の二の舞はお前も嫌だろうからな?」

「ああ。警察沙汰はゴメンだよ……白銀(シロガネ)、準備はいいな!」

どうやら少年は手にした刀−−白銀と話しをしているようだ。他人から見ればおかしな人、と思われるかもしれない。そもそも少年が刀を持っているという時点で異質ではあるが。

「精神を集中させ、己の感覚を研ぎ澄ます……白く輝きし銀の刃よ、契約に従い敵を滅ぼさん!」

白銀が少年の言葉に合わせるように輝きを放つ。

「……光刃・白輝(コウジンハッキ)!」

少年が白銀を大きく縦に振り下ろすと、白く力強い流れが白銀から漏れ出す。
流れは次第に岩の狼を押し、徐々に呑み込んでいる。
岩の狼は、流れから逃れようと必死にもがく。だが、前後左右から襲い来る流れに、動く事も出来なかった。

「悪いが、消えてな。これも依頼だから」

少年が白銀を、刀に付着した血を払うように軽く横に払うと、ゴウッ!という爆音と強い振動が辺り一帯に響き渡った。

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あきゅろす。
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