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〜龍と刀〜
ぬくもりU
七○一号室はすぐに見つける事が出来た。非常扉がちょうど廊下の中心に位置しているのでその目の前にある部屋の番号を見れば大体把握出来るのだ。
部屋の前に立ち、チャイムを押す。数秒の間のあと、扉が開かれるとそこには少女が居た。

「こんばんはー!」

「おー葵ちゃんか。久しぶり……大きくなったなー。何年生だっけ?」

「お久です!えへへー今は中二ですよ!」

「中学生だったか……」

井上葵(アオイ)。あの井上にもこれ程可愛らしい、似ていない妹が居るのだ。肩の辺りで切り揃えられた髪、大きな瞳に幼い顔立ち。身長は小さいながらもスタイルは良い方だろう。正直血が繋がっているのかすら疑問だが。
それから遅れて井上兄が登場。部屋着だろうか、黒いジャージを身に纏っている。

「まったくだよ。こいつ胸ばっかりデカくなりやがって」

「お前妹にそんな事言ってるのかよ……マジで引くわ……」

「妹だから言う!」

「意味がわからん」

このテンションはどうやら家の中でも変わらないらしい。親御さんの苦労が目に見えてきそうだ。

「お兄ちゃんみたいに髪しか伸びない人には言われたくないよーだっ」

「ハゲてないんだから良いだろ?サラッサラだぜ?」

髪を掻き上げて妹にウインクする兄。陽は半眼になって睨み付けるが気にしていないらしい。さすがである。

「陽さーん……この人気持ち悪いですー」

「そうだな。それは否定しない」

「否定しろよ!」

「する要素がねえだろ……」

靴を脱ごうとしていた陽の背中に隠れる葵。どちらかと言えば陽が兄で井上は他人だ。
部屋の中は綺麗に掃除されており、オレンジ色のライトが優しく廊下を照らしている。恐らく奥に見えているのがリビングで、所々にある戸が二人の部屋だったりするのだろう。しかし、こうして見るとやはりこのマンションは相当高そうだ。

「なあ親御さんに挨拶したいんだが……」

(え!?私たちまだそんな関係じゃ……!)

「お、そうか。今日は母さんしか居ないけど……おいお前何顔赤くしてんの?意味わかんないんだけど?」

「なってないし!バーカ!」

陽は今のやり取りで何となく分かった。やはり兄妹なのだろう。返し方がどことなく似ていたのだ。

「バカじゃねえし!」

「うっさい!陽さん困ってるから早く行くよ!」

「ちゃんと行こうとしてたろお!」

「仲良いな……」

家族の温かさ、と言うのだろうか。そのようなものがひしひしと伝わってくる。月華のところもそうだが、どうしてこうも羨ましく、輝かしく感じてしまうのか。確かに両親は居ないが、今は充実していると思っている。それなのにどうしてだろう。――心が痛い。

「どうしたー?」

その二人の姿に見蕩れていたのか、足を止めてしまった陽。それに気付いた井上が目の前で手を振って来る。何でもない、と言わんばかりにその手を軽く払い先を促す。

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あきゅろす。
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