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〜龍と刀〜
十二月第一週の休日V
ゲームセンターには独特の雰囲気が流れている。一部には不思議な熱気とも取れる感覚。特に、対戦格闘系やリズムゲームには近寄りがたい空気が蔓延している。あの輪の中に入っていくのは初心者には難しい。今はまだこの場所には少ないが、メダルスロットなどに執着するお年寄りなんかも現れるのがその独特の空気感の所以だろうか。

「ゲーセンなんて久々に来たなぁ」

「そうだね。龍神はなかなか来ないからね」

「何でそう嫌味っぽく言うんだよ……行きたくない訳じゃないんだ。あいつのタイミング悪いんだぜ?」

とりあえず井上を探しながらどのようなゲームが人気そうなのかを横目で見ていく。やはり人が多いのは格闘ゲームなどだ。少ないなりにも行列になっているではないか。人に見られながらプレイするのは上手くないと出来ないだろう。
人だかりにはリズムゲームだ。ボタンを押して曲をクリアしていくものや楽器体感型など様々。これもまたプロのような腕捌きを見せる人間が多い。彼等は極めるのに一体どれだけの金額を注ぎ込んできたのだろうか。
人の回転率が高いのはレーシング系。プレイ数が店側に決められているので居座れないのだろう。
多種多様なゲームの間をすり抜けやっと視界に井上の姿を捉えた。彼の前には所謂ガンシューティングアクションゲーム。その画面をじっと見つめ、何やら真剣な表情。

「こんなとこに居やがったのか」

「遅かったな!二人とも!」

「お前が勝手に歩き回ってんだろ」

「まあそんな事は良いんだけどさ。とりあえずこれやろうぜ!これならランキングに名前を残せる……!」

どうやら井上はランキングに名前を残せるゲームを探していたらしい。そして見付けたのがこれ、という訳だ。タイトルは『ゾンビパニックU』。その分かりやすい名前通り、プレビュー画面には遅い来る不気味な人型ゾンビを容赦なく撃ち滅ぼしている動画が流されている。

「な、龍神一緒にこれやろう!」

「まあ別に構わないけどな。中島はどうする?」

「シューティング苦手だし、格ゲーのとこ行ってるよ」

「じゃあまた後でな!おっしゃーやるぞーゾンビ撲滅!亡骸にしてやるぜ!」

意気揚々と財布からお金を取り出し、筐体へ。二人プレイには残り時間内に追加が必要らしい。陽も特に急ぐ事も無く追加。すると手前にある拳銃型コントローラーの説明が入り、それから短いストーリーが始まる。

「……なあパンデミックって何?」

「お前、俺に横文字聞くとか喧嘩売ってんの?」

二人は英語が出来なかった。だが何となくだがストーリーは掴めた。
謎の病原菌の感染が広がり、ゾンビに世界が侵食されていく。そこで主人公とその相棒は国外逃亡をするためにゾンビ達が犇く街の中を拳銃片手に立ち向かうという外国産ゲームである。会話シーンには字幕付き。

「国外逃亡しても何も解決しなくね?」

「むしろ広がりそうなんだが……そう言えばこれ続編なんだよな?」

「まあゲームだしな。外国産だしな!意味分からないのとか良くある!」

「実際にあったらまずお前から逃げる」

こうして『ゾンビパニックU』を協力プレイモードで遊ぶ事になった二人。たまに出て来る横文字には首を傾げながら。

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