[携帯モード] [URL送信]

〜龍と刀〜
十二月第一週の休日U
色々と愚痴をぶつけながらの道中ではあったがどうにか目的地に到着した。
つい先日グランドオープンしたばかりの大型複合商業施設。ついにこの街にもやってきたのだ。オープン前日には沢山の人が関わっただろう。出店する予定の店舗の従業員だけではなく、警備員や放送関係の業者も。それら全ての人たちの成果がこの施設と言っても良いのではないだろうか。それでこの反響であればとても充実感を得られるのかもしれない。
賑わう店内。BGMだけではなく、来館アナウンスなども流れ、更にそこへ話し声だ。なかなかの騒音。しかし新物好きの人々はこぞって集まってきている。それはここに居る人間も同じであった。

「おー!めっちゃ広いぞぉ!」

「人混みめんどいなこれ……本当に行くのか?なんかもう帰りたいな……」

「龍神は人混み苦手なんだね。まあ好きじゃないけど」

既に中まで入ってきたが、この状況では帰りたくもなってしまう。しかしそうなれば早起きしてまで来た意味がなくなってしまう。さすがに人が多すぎて歩けない、というレベルではないが、気を付けていないととすぐに誰かと衝突してしまいそうだ。

「このタイミングだとゲーセンとか絶対並ぶだろ?並んでまでやるのか?」

「大丈夫だ龍神!最初からそれは知っている!」

親指を立てる井上に苛立ちが募るが、ここはグッと抑える。

「で、そのゲーセンはどこだよ?歩いてんのに見付からねえぞ」

「ああ。二階だからなー」

「……」

「こ、この状況でエレベーターとか乗れると思うかよ!?だから、階段で行きます!」

陽の無言の威圧に恐れをなした井上は、人の波を掻き分けて進んでいく。溜め息を吐きながらもしっかりと付いていく。これだけ人が多いとどこかを見て回ろうと思う気力も無くなり、すぐに帰ってしまうだろうから。

「面倒だなあ……」

「まあまあ井上が面倒なのはいつもの事だし」

「仕方ないか……せっかく来たんだからな……」

先を進んでいた井上が階段を発見した様子で手を振っている。公衆の場でそういった動きはあまりして欲しくは無いものだが、言っても伝わらないのだからああしておくしかないのである。
二階へ続く階段にもやはり人が居る。売り場の比ではないが、同じような判断をした人々だろう。座って休憩している人もちらほら。

「二階にはゲーセン以外に何があるんだ?」

「服屋とかじゃね?正直ゲーセン以外の場所まで確認してないんだよなー」

「それだけ楽しみにしてたのによく遅刻出来たね。さすが井上だ」

「うっせえよ!メガネ割るぞ!?」

幅の広い階段は意外にも短く終了し、二階へ到達。ここはどうやらそこまで人が居ないらしい。確かに周りを見渡してみると奥の方に服売り場が見えるが、近くには玩具売り場などの子供向け店舗が多いみたいだ。その分違った賑わいがある。お目当ての玩具を見つけてはしゃいだりおねだりしたり。陽にはなんだかこの平和な感覚すら久し振りのように思えてきた。

「おぉ、あそこか!龍神、中島!早く行こうぜ!」

どうやらここにも子供が居たらしい。親に連れられた少年少女達の方が大人しいと思えてしまう。しかしそんな事は気にも留めず、井上は一人で暴走。走って行ってしまった。

「とりあえず場所も分かったし走らなくても良いか……」

「あれじゃあどっちが子供なのか分からないよね」

「井上だからな」

何でもその一言で纏めておけばどうにかなる、と陽は考えているらしい。目的のゲームセンター前に着くと、予想通りの大繁盛だった。

[*前へ][次へ#]

[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!