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〜龍と刀〜
休息の時W
衝突。
先に仕掛けたのは勿論の事ながら陽。
強烈な踏み込みによって瞬く間に幸輔の懐に潜り、固めていた右拳を全力で打ち抜いた。
その攻撃をまるで予測していたかのように幸輔は力の流れを反らすため、体を横へ、更に左手をにゅっと伸ばして飛来した腕を絡めとる。

「……!」

「大丈夫〜。折ったりはしないからね〜」

不吉な事を言いつつ、掴んだ腕を軸に回転。当て身をしたついでに胸倉に余った右手を。そしてそのままの動きで陽の体を投げ飛ばした。
陽は受け身を取れずに床に背中を打ち付ける。戦ったばかりの体に衝撃が走り、少しだけだが傷に響く。どうやら出血はしていないみたいだが。

「さっすが……動きが軽いですね……」

痛みに顔を歪ませ、愚痴を零しながら立ち上がる。

「いやいや〜、今のはただ単に龍神の力をそのまま受け流しただけだからね。つまり、それだけの一撃を打ってたっていう訳さ〜」

相変わらず軽く、だが適切に言葉を紡ぐ幸輔。今の一瞬でこれだけの事を見抜いたのだ。

「というか龍神〜?今のボクに直撃してたら確実に大ダメージなんだけど〜?そこはどういう理由なのかなと気になったよ〜」

「あー先輩なら大丈夫なんじゃないかと信用して打ったんで」

「それは喜んでも良いのかな〜?」

笑顔を作り、再び向かい合う二人。

「そんじゃあ次はこっちからやらせてもらうよ〜」

ふわっと幸輔の体が浮いたと思えば、陽の顔のすぐ真横に襲いくる足が視界に映る。

「っ……」

持ち前の瞬発力だけで腕を盾にして直撃を避けるが、しっかりと骨に伝わるダメージがあった。
ここで終わるなら良かったが、更に追いやるようにもう一回。
ビリビリと痛む腕。しかしその強烈な蹴りは陽の闘争心を掻き立てる結果に。

「この……!」

残っている腕に力を込め、牽制として振るう。何とか距離を取って形勢を立て直そうという魂胆だ。
その意図を汲み取った幸輔は陽の狙い通りの動きで回避、離れた場所に音もなく着地。この身軽さはやはり強敵だと思わざるを得ない。

「(確実に一撃入れたいよな……さっきから簡単に流されてるし。先輩に徒手ってのはキツかったか?)」

再び拳を構えながらどう動くかを必死に頭の中で選択。この作業はいつになっても苦手なのだが、やらなければ幸輔に当てることはほぼ不可能だろう。何せ相手は生粋の忍の家系。体術なら圧倒的に格上だ。

「(だけど……例え練習だとしてもだ……)」

一度静かに瞳を閉じ、ゆっくりと息を吐く。

「負けたくは、ない!」

その目が開かれた途端、陽はまた突進を仕掛ける。

「まさかそのまま突っ込むなんて……これはさすがにびっくりしたよ〜」

考える時間を与えたのに……と少しだけ残念そうに口元を歪ませる幸輔。そんな事はお構いなしに懐へ。

「俺のモットーですからね……正々堂々ってのは!」

敢えて固めた拳を突き出そうとはせず、まるで薙ぎ払うように腰元から振り抜いた。その一撃は裏拳というには威力が高く、鋭い。

「いっつ……今のは居合い、かな〜?」

今のは効いたのか、よろけながらも問い掛ける。
しかし、何かを見出したらしい陽は攻撃の手を緩めない。振り上げていた拳にもう一方を重ね合わせて大上段から追撃を加える。

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