〜龍と刀〜
休息の時U
「……とまあ何でこうなるんですかね先輩」
「まさか二人で組んでるだなんてさ〜。残念ながら気付かなかったんだよ〜」
結局敗北を期したのは陽と幸輔の二人になったようだ。
「別に料理ぐらい生きていく分には出来るから問題ないんだけどね〜」
「俺は……出来なくはないけど失敗したくないからやらないんです」
「龍神はきっと大丈夫〜。色んな意味で」
「どんな意味ですか……」
そんなに広いとは言えない台所にて他愛もない会話は続いてく。
「男二人で料理なんて……どうなんだろうね〜?」
「さあ?……とりあえず今はちゃっちゃと終わらせましょうよ。ってか先輩は今日はいつまで居る予定なんです?」
陽は適当にフライパンに投入された野菜類をこれまた適当に炒めながら。
幸輔は器用な手つきで食材を切っていく。
「ん〜気が向いたら帰るかね〜。何か用事でも〜?」
「せっかくだし手合わせとかどうかなと」
「素手ならいいよ〜。武器ありだと疲れるし、実は素手のが得意なんだよね〜」
そう言いつつ包丁を手の中でクルリと一回転させてみせる幸輔。本当に素手の方が得意なのか、と少し疑問が沸いてきた。
「先輩が良いならそれで……」
「あいよ〜。負けないからね〜?」
喋りながらも男二人の料理は徐々に完全に向かう。明らかに手抜きなのだが、不味くはないはずだ。
*****
所代わり居間。
こちらはトランプに勝った女子二人が料理の出来上がりを待っていた。
「月華ちゃんは、何作ってくれてると思う?」
真剣な眼差しでトランプタワーを建設中の紗姫が目線を外すことなく声を掛ける。
「たぶんだけど、冷蔵庫はあんまり入ってないはずだから……野菜炒めとかかな?」
さすがに冷蔵庫の中を把握しているらしく、顎に指をあてて答える月華。普段作っている人間には容易い事なのだろうか。
「手っ取り早いし楽だし。男の料理なんてそんなもんかしらねー」
「意外と手の込んだものだったりしてね。というか紗姫ちゃんは何やってるの?」
「トランプタワーよ。集中力と手先の器用さが−−」
言った途端に集中力が切れたのか、手元がブレたらしく完成間近に見えたタワーは物の見事に崩れ去ってしまう。
「せっかく後ちょっとで完成だったのに……」
がっくりと肩を落とし、あからさまにテンションが下がる紗姫。
「ま、また頑張ればいいと思うよっ」
「んーなんかもう良いわ……月華ちゃん、やる?」
卓袱台に突っ伏しながらトランプを手早く纏める。一体どれだけ本気でタワーを作っていたのだろう。
「私はそういうの苦手だから遠慮しようかな」
「それじゃ片付けて起きましょうか……あ、出来たみたいよ」
「え?」
さすがの嗅覚と聴覚。月華は扉が開くのでようやく気付いたのに、その十数秒には分かったらしい。
「さ、適当だが飯作ってきたぜ。先輩の器用さに助けられたってのが本音……」
「まあまあ、龍神も頑張ったんだから〜。とりあえず食べよ〜」
「あはは。やっぱり陽ちゃんは料理は苦手なんだね」
「何だか二人に負けたみたいで嫌ね……」
どうやら献立は月華と紗姫が予想通り野菜炒めがメインみたいだ。
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