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〜龍と刀〜
休息の時T
*****


仕方なくトランプに興じていた陽たちに、先程知らせが入った。
内容は記憶の操作が完了した、暫くは普通の生活に戻っても良い、と。

「それじゃあ、ちょっとブレーカー上げて来るか」

手にしていたトランプ数枚を卓袱台の上に置き、自分は電気系統の復旧作業に入ろうとしたその時だ。

「あれ〜?龍神、逃げるの〜?」

「そうよ。まだ勝負は着いてないわ」

「ん……むぅ」

若干二名、立ち上がった陽に不快そうな声を出す者が。もう一名は−−どうやら神族の方はルールを覚える為に必死らしい−−顔を少しだけ動かしたが、すぐにトランプへ。

「ちなみに聞くけど、俺がそのままトランプ続けてたらブレーカーは誰が上げに行くんだ?」

再び視線が集まる。分かってて聞いているので溜め息しか出なかった。

「……よくもまあ、あんな派手に戦った後でこんなのんびりしてるよな」

「切り替えは大事なのよ?いつまでも張り詰めてたら疲れちゃうじゃない」

「八雲の言う通りさ〜。こんな時だからこそ、罰ゲームを賭けた勝負ってのが必要なのだよ〜」

「罰ゲーム……?」

紗姫の言う事はは最もだったが、幸輔の口から聞き覚えの無い単語。

「ちょっと待て……何の話だ?」

いつの間にそんな事になっていたのか、陽には分からない。だから当然、質問する。

「最初に言ったよね〜。負けた数が多い二人は晩ご飯を作るって〜」

「だけど、月華ちゃんはほぼ毎日作ってるから関係無しで私たち三人の中から二人決めるのよ」

「え?絶対そんなの言ってないだろ?俺には全く聞き覚えがないぞ……」

「だって龍神君は最初の方は八割ぐらい寝かかってたし」

緊張感が少なかったのはどうやら陽もだったみたいだ。言い訳するなら、一人で激闘を繰り広げたからとも言えるが、ここに居る全員が前線で戦っているのだから皆疲れているはず。自分だけとは言えない。

「……罰ゲームがあるなら、負ける訳にはいかないか」

息を鋭く吐き、戦闘時にも勝るとも劣らない目つきでトランプを構える陽。

「お?ついに龍神が本気でやるみたいだよ〜」

幸輔はいつもと変わらぬ飄々とした雰囲気で顔をパタパタと扇ぎ始めた。

「えと、月詠さんが拗ねて戻っちゃったみたいだから私が今からやるね?」

西洋の娯楽は難しい、と最終的に月詠は引っ込んでしまったため変わりに月華が途中参戦する事に。

「お帰り月華ちゃん。これで皆が本気で取り組むみたいね……最後の大一番になりそうな予感がするわ」

実は料理に自信が無い事を知られたくない紗姫は人知れず闘志を燃やす。

「最後はシンプルに、定番のババ抜きで終わろうか〜」

「小細工とか出来ないからいいんじゃないですかね……先輩ならやりかねないが」

「じゃあやらないように私が配るよ!」

「そうね。そこの二人より断然信用出来るものね」

各々が自分に合ったやり方で緊張の糸を弛めていく。
外は未だに騒がしいが、この場所も良い意味で賑やかになっていくのだった。

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