〜龍と刀〜
時代の流れ
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巨大な魔法陣から射出された見えない何かは、誰の目にも耳にも触れる事なく縦横無尽に駆け巡る。
放たれているのは超広範囲に及ぶと思われる記憶操作術式だ。あくまでも試験的な運用で、成功するか失敗するかは分からない。成功すれば万事、という訳では無いがひとまずは良し、失敗すれば……どんな弊害が起こってしまうのか。言わば魔術師たちの決死の大博打だ。
世界の裏で表社会を正に陰ながら支えてきた歴史の中でも、最も大きな干渉。
今はただ、成功をするのを祈るのみ。
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「一体いつまでこうしてればいいんだろうな……」
家の中にある全ての電化製品の電源を切って待機、とは言われたが、それ以降の伝達の方法はどうする予定なんだろうか。
「それ言うの五回目だよ〜」
「うむ。聞き飽きたぞ」
「そうよ?今はこれでもやって気分を落ち着けたら?」
一同が集まっているのは使っていない客間から幸輔が勝手に持ち出して来た小さい卓袱台の周りだ。
「……この状況下で落ち着けるか?しかもこれで?」
「何事も気の持ちようだと昔の人間も言っておった」
「……」
陽は頭を抱えるしかなかった。何せ先程まで戦っていたのに、今やっているのはこれまた勝手に持ち出したトランプ。
「何でなんだろうな……」
強制参加させられ、陽もその輪に加わる事に。
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「ふむ……大分時間が経っておるな」
「それでは一度確認に行かせてみましょうか?」
「そうしようかの。念波が飛ばせる者を確認と、各魔術師への伝達へ向かわせよう」
テキパキと指示を出す白髪の老人、協会の長はやはり自慢の髭を撫でつけつつ続ける。
「だがしかし、よくもこのような奇策を思い付いたものよのぉ」
「本当ですね。私たちの時代では考えられない事です……」
「ふぅむ。これこそ、時代の流れ、というものなんであろうな。年寄りには早過ぎる」
しみじみと奇策について語り出した老人たちに、比較的若く見える男が、
「いやいや、皆様だってまだ若いですよ!むしろこんな時こそ頑張って頂きたいもんです」
「じゃが、時は常に進み続けるからの。儂等に頼ってばかりでは取り残されてしまうぞ?」
「そんな滅相もない……!」
まるで成功したかのような和やかな空気が流れているが、魔術の結果はまだ分からない。不安が全て拭い去れてはいないのだ。
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念波というのは本人の意識を式紙や鳥などに乗せて遠くまで届ける魔術。それを行えるのは術式を緻密に組める人間のみと言われている。
「これは……!」
そして、彼女らの仕事は主に偵察や伝達。
「協会本部に通達!第一○八、魔術の成功を確認致しました!繰り返します−−」
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