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〜龍と刀〜
夢の中V
標的の上をゆっくりと旋回、そうしながら正確に狙いを定めて−−と思いながらやっていたのだが、重大な事に気付く。

「獲物じゃありませんでしたね……」

つい、いつもの感覚で上空から狙って仕留める所だった。
主の青年からもらった命は顔を見て来る事だ。決して攻撃ではない。

「危なかったです……」

徐々に高度を下げていき、しっかりと顔が認識出来る距離に。鳥であるアスラにはこのぐらい離れていても何の問題もない。

「(確か頬に傷があると仰っていましたね)」

言われた事を思い出し、まずは右頬を確認。無し。
次に左頬を。

「(どうやら目的の人物らしいですが……どうしましょうか?)」

アスラは飛びながら思案する。知り合いだと言う事なら、青年が出向かなくてはいけない。

「(主の手を煩わせるのは嫌ですから、試してみましょう)」

とある方法を思い付いた。これが上手く行けば主はあの場から動かなくても良いのではないだろうか、貢献出来るだろうかと、と考えが先へ先へと進んでしまう。

「実行あるのみ、です」

急上昇、そしてすぐに急降下。それに有した時間は僅か数秒。それをやられた本人も気付くのに時間がかかったくらいだ。

「そこの鳥!帽子を返しやがれ!とっつかまえて丸焼きにしてやんぞ!?」

緑色の帽子を取られた男は、逃げ去るアスラを全力で追い掛ける。ここで追い付かれてしまっても、引き離してしまっても計画は失敗。あくまでも引き付けておかなければならないのだ。

「くっそぉ!待てって言ってるだろ!」

男は道端に転がる石を投げるが、アスラはそれを予知していたかのように避ける。

「次は当てて……!」

言葉が止まる。
目の前に立つ人物を見て怒りの表情を正反対の物に変化させた。

「おお、我が親友のマーワルドじゃないかぁ!こんな場所で何してるんだ?」

「それより先に、ほら。うちのが迷惑掛けたね……人違いでない事を確認してからやらせるつもりだったんだけど……」

「そうかそうか。黒いの、さっきは怒鳴ったり石投げたりして悪かった!」

青年−−マーワルドの肩に乗るアスラに謝罪の言葉を述べる男。やたら目立つ緑色の帽子を頭に乗せ、再び口を開く。

「それで?我が最愛の親友はこんな所で一体何をしてるんだい?」

「最愛の、の部分は聞かなかった事にするよ。……この町に用事があるんだけど、どうも検問が厳しそうでね」

「ほおほお。そこでこの運び屋ジーニーの力を借りたい訳だ?」

左頬にある一直線の傷を自慢げに撫でながら言うジーニー。

「俺みたいなのがあんなのを通過出来ると思う?」

「無理だな」

マーワルドの問いに笑顔で真実を告げる。それも仕方ないと言えば仕方ない事なのだが。
所々が擦り切れた上下の衣服はいかにも安物のようで、羽織るマントもお世辞にも綺麗とは言えない状態である。

「まあ立ち話もなんだし、とりあえず荷馬車に向かうとするか?早くしないと門が閉じられるらしいからな」

「そうしよう」

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