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〜龍と刀〜
奔走X
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「ふむ、準備は完了したかの?」

いつもと同じように顎髭を撫でながら聞く。
歴史上初の試みであり、これから多用される可能性のある術式を。

「全魔術師に通達は完了しました。あとはこの術式を発動させるだけです」

「上手く乗せれれば良いんですが、何せ初めてなのでどう転ぶかは誰にも予想出来ません……」

「それは儂にすら分からぬのじゃよ。だから、信じて発動してみよう。良い結果になる可能性だってあるはずじゃからの」

全てが予測不可能。
しかし踏みとどまっていては意味がない。せっかく出た解決の糸口をむざむざ手放す訳にもいかないのだ。

「……発動させるための魔力は儂が出す事にしよう。その方が良いじゃろ」

「……なっ」

過去の栄光に泥を塗らないためにも。
魔術の未来を断たないためにも。
権力者として、全ての責任を負う。

「異論は認めぬぞ?儂とて、一端の男じゃ。二言は無いんじゃ」

言ってからすぐ、術式を発動させるために地に描かれた魔法陣の中央へ。
様々な知識を総動員して作られたこれは、普段の物の数倍の大きさ、記号の量を有している。
それもそのはず、正確な術式が完成していないため、元々ある術式を広げていくしかないのだ。成功すればそれを記録し、圧縮したりして個人が使い易い物へと作り替えていく……そしてそれが魔術の歴史となる。

「そうして生きて来たのが儂ら人間じゃからな−−さあ、始めても良いかの?」

いつになく気合いの入った声で。まさしく大勢の人間を率いるリーダーだ。

「はい!いつでも行けます!」

「全ての網と結合完了……今が最大の効力を発揮出来るはずとなっております」

「そうか……では、さっさと終わらせて建築物などの修理にも手を回すかの……!」

片膝を地面に付け、皺と傷だらけの手の平で魔法陣を叩く。乾いた音が静まり返った空間に響いた。
その場にある手書きの記号に光が灯り、水の波紋が広がるように、瞬く間に魔法陣を塗りつぶしていく。

「順調だ……このまま続いてくれよ……」

「さすがは長!あんな時間の掛かりそうな魔法陣を短時間で−−」

集中している本人には全く聞こえていないが、外野ではこのような呟きが複数。
全てが祈りに近いもの。
そして、最後の一周に光が届く。何が書いてあるのかは一般人には理解出来ないだろうが、彼らには分かる。
最後に書かれているのは、

「表示すべき結果は……魔術師以外の記憶操作。音と光による、人間の聴覚と視覚への刺激じゃ!」

一文字。
ピースがはまった魔法陣は、今までで一番の輝きを放つ。魔力が充満している証だ。

「術式、広範囲記憶操作……発動!」

轟音とともに、見えない何かが射出されたのをその場に居た全員が感じた。


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あきゅろす。
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