〜龍と刀〜
奔走W
陽たちが協会から承った仕事は、とても簡単な物だ。子供でも出来るレベルの。
「家の中のテレビ、ラジオ、携帯電話、パソコンの電源を付けるな……か」
「たったそれだけでどうにかなるんだろうかね〜?しかも魔術関連者だけなんだよね〜」
「それで結界を張ってその場から動くな、だったわね。何が行われるか見当も付かないわ」
そう。先程協会から電話で指示を受けた内容はこうだ。情報を送受信出来る電化製品の電源を絶対に付けない事。そして、結界の外に出ない事の二点だった。
このような内容の指示など受けた事が無い故に、一体どのような方法で記憶操作を実行するのかも分からない。
しかし決断に踏み切ったという事は、それだけやる価値があるという事で、ある程度の自信があるからだろう。そうでなければ協会がわざわざ結果の分からない行動に出たりはしないはず。
「……何故、ワタシには何も指示しなかったのだ?」
一人はどうやらご不満らしい。
陽と幸輔は二人に説明するや否や、月詠にはそこから動かないでくれとだけ頼んだ。
「それは、ほら……」
「何だ?」
じとっとした目を向ける月詠。仲間外れにされた、とでも思っているのか。
「元であっても神族でしょ〜?そんな高貴な方を働かせる訳にゃ行かぬのですよ〜」
説明に困っていた陽に、珍しく幸輔からの助け舟が。それっぽい事を並べて月詠の機嫌を良くしようという魂胆らしい。
しかし月詠はそんな事にも気付かず、
「お、おぉそれは悪かったな。それなら仕方ないな。うむ」
などと満足そうに椅子に座っている。
実のところ、月詠は電化製品全般に弱いらしく、何度か壊しかけているのを知っていたからだ。
この場合、壊れてしまっても問題が無い気がするのだが。
「だからと言っちゃあ悪いが、この結界の維持は任せる」
「存分に任せるが良い。この『満月』、どのような魔術的攻撃、物理的攻撃にも鉄壁となって守ってやる!全力でな!」
「でもあんまり力込め過ぎたら月華ちゃんの体に負担があるんじゃないかしらね?」
「そこら辺の加減も出来るに決まっているだろう?依りし−−月華の魔力すらも操れるのだからな!」
さり気なく言われた事を実行している月詠。気付いているのは紗姫だけみたいだ。
「よし、それじゃあこの家のやつは全部片付けたよな?」
「私と月華ちゃんのはしっかり確認したから大丈夫よ」
「もちろんボクも余裕でオッケーさ〜。携帯は念のため電池パック抜いてるし〜」
全員の準備は万端。
あとは協会が行う何かを今か今かと待つだけだ。
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