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〜龍と刀〜
奔走V
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陽と幸輔は一足先に到着し、だらだらとくつろぐ事はせず、適度に緊張感を保ちながら休憩していた。それだけでも疲労感は増すだけだと思うが。

「あ〜やっぱりダメみたいだよ……どうやらあっちも忙しいらしいからね〜。当然と言えば当然なのかな〜」

「協会の方でも何か……?」

「ありゃ〜?言ってなかったっけ?あそこが襲撃受けて結界は壊れるし設備もいくつかやられて、今は……たぶんこの騒ぎをどうやって治めるかを模索中じゃないかな〜」

幸輔の言葉は事態が深刻である事を示していた。それだけ規模が大きい衝突であったのだ。

「まあ協会の方は月華ちゃんのお父さんとかじっちゃんやらの頭首陣が居たから大きな被害は少なかっただろうけど〜」

「臨時の頭首会だって言ってたし、俺も聞いてたからそれは知ってますよ」

「問題は設備よりも人員、かな?これだけの混乱をどうにかするには、記憶操作を魔術師たちを除いて一人残らずやらなきゃいけなくなるでしょ〜?」

幸輔の推測はほぼ合っているだろう。その対応策が確実になるまでは、協会は周りの事には手を出せなくなっているのだ。

「他に方法が思い付けばそれを実行しに掛かるんだろうけど〜。さすがにボクもそこまでは分からないからね〜」

「それは確かに。何かあったら連絡があるだろうし」

一向に前へ進んでる気配がしないが、今は仕方ない。今後に備えて鋭気を養う事に徹しよう、と体を椅子に預けた時だ。
玄関の方で何やら話し声が聞こえる。

「ただいま戻ったぞ少年たち」

「私も一緒よ。ねえ、ここに集まってるってことは作戦でも立てるのかしら?」

声の主は月詠と紗姫だ。どこで戦っていたのかは知らないが、なかなか早い。

「いやいや残念ながらこっちからは何も出来ないんだよ〜。全ての敵さんが居なくなっちゃったから、探査も掛けれないし〜、協会は対応を模索中だろうし〜。という話を今さっき龍神としたばかりさ〜」

「それは……二度手間させてごめんなさいね?」

「気にしてないから大丈夫さ。こうなる事は予想の範囲内だったし〜。さてさて、みんな集まったし……どうしようか〜」

何故か視線は陽に向けられる。当然だが、陽は何も考えていない。

「いや、俺を見てられても……」

言い返す言葉すら思い付かずに悩んでいる陽に、そして幸輔にも電話が入った。狙いを定めたように、ほぼ同時。

「噂をすればなんとやら、だね〜……はいもしもし〜?」

「じゃあこっちもか。龍神です……」

相手は協会の連絡員、とでも言うのだろうか。
優先順位が高い二人−−頭首に近い−−には協会から即時に連絡が入る。それでも幸輔の方が早いのは、情報収集力の違いだ。

「え、そんな簡単な事で良いんですか?……まあ、確かに。はい」

「承知しました〜。うちの人間で魔術師には連絡をしておきますんで〜」

魔術に対する知識が浅い陽はどうやら詳しい説明を受けているらしい。しかし順応性の早い幸輔は電話を切り、今度は誰かに掛けているみたいだ。

「何があったのかしらね?月詠さん分かる?」

「ワタシの耳でも聞き取れない。しかし、進展はあるみたいだぞ」

それは二人の動作を見れば明らか。
これから始まる大規模な、それにしては小さな物を使った記憶操作が行われるのだ。
そのために少し動き回らなければならない。

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