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〜龍と刀〜
再認識
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今回の戦いで得たものは、とアスラは闇の中で一人考える。多くの犠牲を払い、それで自分たちが手にしたものがあったのだろうかと。

「収穫が全く無し、と言う訳ではありませんが……」

戦いは常に非情であり、薄情なのはとうの昔に知っている。しかしそれは戦っている時の心の在り方で、終わってみれば大切な仲間を失ったという気持ちの方が大きい。
関わりすらほとんど無いが、それでも夢を持って同じ方向に進んでくれた。それだけで充分だ。

「アリゴールにキュルサム、セオにメルビン……強力な仲間を失いました。しかし、彼らの犠牲を無駄には出来ません」

腰に携えられたサーベルを鞘から引き抜く。光源が無いはずの闇の中に一筋の光。
やはり、騎士としての心は捨てるべきではないという事に思い至った。どれだけ自分の姉に言われようと、これだけは今更変えられない。いや、変えてはいけないのだ。
折れる事無き、騎士の心を。
主との盟約を果たすためにも。

「私は騎士……盟主との誓いを果たすため、力を振るう。そのために−−」

言いかけて止める。独り言だが、いつどこで誰が聞き耳を立てているか分からない。下手に話が漏れては威厳を保つのも難しいだろうと考えたのだ。
ここはそういう場所なのだから。

「だったら場所を変えれば良い話ですが……」

闇の一部を変質させ、扉を作り出す。重厚そうな扉は何の号令をしなくとも勝手に開く。
そこにゆっくりと足を踏み入れ、漆黒の兜に隠された瞳を閉じる。思い描くのは、“あの場所”だ。
ほんの数秒、一気に視界が開けた。陽光が燦然と輝くここは、アスラにとっての思い出の地。アスラと盟主にとっての。

「私のように心の荒んだ者でも思い出に浸る事ぐらいは許されるでしょう……」

ここは何も変わらない。例え何度壊されたとしても。アスラの意志によって復活し、元の綺麗な自然に。
そこまでするくらいにお気に入りなのだ。

「……」

兜を脱ぎ捨て、脇に抱える。アスラの黒い艶やかな長髪が外気に晒された。
どんなに屈強な戦士であろうと休息は必要だし、張り詰めた弦はいつか切れてしまうのだ。
木に寄りかかり、背中を預ける。木漏れ日が心地良く体を温め、吹く風が優しく頬を撫でていく。
まさしく平和そのものといった感じだ。

「久しぶりに、睡眠でも取りますか」

アスラはここ数年、睡眠という行為を行っていなかったのだ。
人間と違ってそれぐらいは容易い事らしいが、やはり眠くなる時はある。だから、思い立った今こそ、という訳だ。
完全に無防備な状態。誰がアスラのこんな姿を見た事があるだろうか。
翼を顕しだらりと下げ、まさに羽を休める体勢。

「今だけは……私にも休息を頂きたい……」

誰も居ない虚空に小さく呟き、アスラは意識を睡魔に手渡した。


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あきゅろす。
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