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〜龍と刀〜
平和な時間W
「そんじゃあ、ボクはここら辺で失礼させてもらうよ〜」

学校から離れ、街の中、ちょうど前回戦った時に結界が張られた場所−−確か、その中でも端の方だったろうか−−に到着。
そこで幸輔は団体からフラフラと外れる。どうやらこの辺りから調査を開始するみたいだ。見渡せば、知った顔があるような気もする。

「まあね〜ボクだってこんな広範囲を一人で歩き回るなんて疲れる事したくないしさ。元々、ウチに出された依頼だったからね〜」

ウチ、というのは『御門流』の事だ。さすがは忍者の集まり、こういう調べ事の依頼が回ってくるのだろう。

「なるほど……頑張ってください」

「はいは〜い。さっさと行ってきますよ〜」

足取りは軽やかに、陽たちとは別の方向へと向かって行く幸輔の背中を見送る。

「それで月華と紗姫に聞こう。街まで出て来たは良いが、これからどうするつもりだ?まさかあてもなく歩き回ろうという魂胆じゃないだろうな」

陽は度々であるが、月華とは外出しているのだ。その都度行くあてもなく、ただ歩くだけという現象を経験した。陽が言いたいのは、目的もなく歩くのは辛いだけ、という事だ。

「俺は別に、どこまででも付いて来ぜぃ!例え−−」

「そうか。なら今すぐあのビルの屋上から飛び降りるんだな」

「言うと思ったよ!」

井上に先を読まれた事にショックを受けつつ、陽は再び二人に問う。

「私は特に無いんだけど……紗姫ちゃんは?」

「最近気になってるアクセのお店に行きたいわね。財布の心配なら無用よ?小物ばっかりの店だから」

例えアクセサリーと言えど高い物は高い。そんな事を知らない陽ではないのだ。
何かあったら井上に貢がせれば良いだろう、という邪悪な考えが頭を過ぎる。

「はいはい。それで、場所は分かるのか?」

「……今から探せば良いでしょ?」

「計画性が無いよな、ホントにさぁ……」

「う、うるさいわね!知ってたら一人でも行ってたの!」

何やら顔を真っ赤にして反論する紗姫に、陽はじとっとした視線を。

「何だろ?見てると胸がモヤモヤと。龍神を殴りたくなるような」

「だ、ダメだよ!私には良く分からないけど!」

「ほぉ、井上が反乱を起こすか?良いぜ?一撃で沈めてやるよ」

「どうやっても立場は上なんだ」

他愛も無い会話。
それを続けていられるように、自分は戦わなきゃならないんだ、と急に心の中に浮かんだのはアスラとの戦いが始まった大通りに出たからだろうか。
平静を装っていても、同じ場所に立っていた人間には感づかれてしまうみたいだ。

「あんまり、一人で背負い込む物じゃないと思うよ?私は時間が短いからそういう考えなのかもしれないけど……」

店探しは井上に任せ、その後ろで月華が囁く。

「そうね。せっかく良い相手が居るんだから頼りなさい?」

「分かってはいるんだがな……分かってはいる」

それだけは譲れない。譲りたくない。子供の意地かもしれないが、これだけは自分で解決したいのだ。

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