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〜龍と刀〜
平和な時間U
陽としては久しぶりにとてもゆったりとした時間が流れた。
時は既に放課後、普段なら真っ先に帰っているはずの陽が、何故か今は教室に残っている。
正確に言うと残されている、だが。

「大きい出費も覚悟だな……」

自身の財布を確認。そして大きな溜め息。
こんな事になったのも、月詠が前回の戦いの事を覚えていたからだ。助太刀に来てやったのだからその分の罰を受けてもらう、と。

「まったく要らない知識持ちやがって……曲がりなりにも元神族じゃねえか」

だからこその貢ぎ物、という考え方も出来るのだが敢えてそこは忘れておこう。

「あれ?珍しく龍神が残ってる!それはつまり俺とゲーセンに−−」

「ちょうど良いところに来たな井上。お前も道連れだ……ゲーセンに行くって事はそこそこ金はあるんだよな?」

「お、おう。軽く三時間は潰せるくらいには」

「よし、お前も来い!」

半ば脅迫に見えるが、陽はお構いなしだ。それに、次の一言を言えば井上は確実に落ちるのだから。

「実は月華と紗姫が買い物を手伝えって言うんだが……お前がここで一肌脱げばフラグが立つかもしれねえぞ」

甘い罠。引っ掛かるのは目に見えているのだが、念には念を押しておこうと思い、続ける。

「頼めるのはお前しか居ないんだよ。な、井上?」

両肩をガシッと掴み、逃がさない。
無論、井上は逃げる気など皆無。目をキラキラさせて答える。

「任せろ!龍神がハーレム状態になるのは腹立たしいし?俺しか居ないなんて言われたらやるっきゃないだろ!?」

「さて、カモは手に入ったからあとは二人を待つだけなんだが……遅いな」

井上はテンションが上がって何も耳に入っていないみたいだ。そちらの方がとても都合が良いのだが。

「龍神はやっぱり悪い人だね〜。友達をカモに自分の出費を抑えようだなんてさ〜。自分の方がお金あるのに」

「そういう先輩は何しに来たんですか?たかりに来ました?」

「まさか〜ボクがそんな真似をする訳無いでしょ〜?面白そうな話が聞こえたから混ざりたかっただけ〜」

突如現れた間延びした声に一瞬身構えてしまった。それもそのはず、幸輔にも前回はかなり助けられたからだ。しかし幸輔に限ってそんな事は無いみたいだ。

「それに、街中出るんだったら目的は一緒だし」

「また何か?」

「いやいや〜そういうんじゃなくて、調査かな?前のでぶっ壊れた箇所に異常が無いかとか」

気だるそうに言う幸輔。
手伝おうか、と声を出す前に先手を打たれた。

「あ〜これはボクの仕事だからさ〜龍神は両手に華の状態を……あ、若干一名居るのか〜。残念だったね」

井上に視線を流し、それから陽に向けて親指を立てる。

「何が残念なのかは知りませんが……」

「ホント、鈍感だよね〜?こりゃ苦労もするか〜。あははは」

笑いの意図すら読めず困惑する陽と、自分の世界に入り込んでしまった井上。そして幸輔はこれから来る二人を待つことになった。

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